今週は牝馬によるエリザベス女王杯がメインとして行われる。“超”の字をつけていい女傑、3冠牝馬のアーモンドアイはホコ先をジャパンCに向けるため、陣営は早々と出走回避を口にしていたし、目下、重賞2連勝中で昨年の秋華賞馬のディアドラは、香港遠征のため、これまた登録せずじまい。
それでも昨年の覇者モズカッチャンを筆頭に、なかなかの顔ぶれがそろった。となると充実の古馬勢か、勢いを増す3歳勢か、どちらに軍配を上げるかが毎年の焦点になるところだ。
3歳勢は先の秋華賞を圧勝したアーモンドアイ、2着ミッキーチャームの出走はないが、上げ潮ムードの3着カンタービレ、秋華賞挑戦を諦めたノームコアの2頭が満を持している。
古馬勢は前出モズカッチャンに、女丈夫の古豪スマートレイアー、フロンテアクイーン、ミスパンテール、リスグラシュー、そして京都大賞典僅差2着で一気に開花したレッドジェノヴァと多士済々だ。
02年に馬単が導入されて以降、これまでの16年間、その馬単での万馬券は4回(馬連2回)。この間、1番人気馬が3勝(2着2回)、2番人気馬は4勝(2着2回)。1、2番人気のワンツー決着が4回あり、比較的順当に収まるGIと見てよさそうだ。
しかし、09年のように圧倒的人気だったブエナビスタが追い込み切れずに3着に敗れ、11番人気のクィーンスプマンテ、12番人気のテイエムプリキュアの、俗に言うところの“行った行った”のハネ満(馬単で25万910円の高配当)が飛び出したりもしている。女心と秋の空──ではないが、簡単でないことも確かだ。
年齢では3歳が8勝(2着5回)、4歳が6勝(2着6回)、5歳が2勝(2着4回)。出走頭数を考えると、3歳馬の強さが際立っている。恐らく4歳以上の56キロに対して、3歳は54キロ(秋華賞より1キロ軽い)で戦える有利さからだろう。古馬の「地力」よりも、3歳の「斤量」の恩恵が上回ると見るべきなのか。
であれば、カンタービレ、ノームコアのいずれかを主力と見るのが馬券上の筋ということになりそうだが、あえて古馬に目をつけてみたい。といっても、前記した有力どころではない。
穴党として大きく期待を寄せてみたいのは、ワンブレスアウェイだ。
人気は恐らく、しまいから数えたほうが早いだろう。評価が低いのは実績からして当然。光るのは春後半のハンデ戦、マーメイドS2着ぐらいで、オープンに上がってからは掲示板に載るのがやっとという成績が続いていた。
しかし冷静に振り返ってみると、そのマーメイドSを境に、馬が変わってきたとも言える。前半戦最後となった前々走の七夕賞は、マーメイドSの時より12キロも体重が増えていながら、見せ場たっぷりの好内容。
そして3カ月ぶりの実戦となった前走オクトーバーSは3着に敗れたが、走りっぷりがスムーズで、これまでのように集中心を欠くことはなかった。
古賀慎調教師は言う。
「メンタル面で大人になったというか、体が大きくなり、心身ともにたくましくなっている」
だからこそ安定感が出てきたのだろう。
この秋、一度使われたことでさらに良化。1週前の追い切りではリズムに乗って実にキビキビした動きを見せていた。これなら“一発”があって不思議ない。
祖母は米国GI勝ち馬で、姉にタガノエリザベート(ファンタジーS)、姉にロックディスタウン(札幌2歳S)、全姉にキャットコイン(クイーンC)、そして近親にゼンノロブロイ(天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念)がいる血筋。この秋の“大化け”に期待だ。