先日、殿の楽屋でNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺」の話題で盛り上がっていると、なぜか話が逸れ「NHKのど自慢」の話に切り替わりました。この時、殿は「そういえば昔」といった感じで、
「のど自慢はラジオの中継もやっててよ、昔はよく歌手とセットで行かされたよ。あれよ、毎週、歌手とお笑いで全国回って中継すんだよ」
と“漫才師時代の懐かしいお仕事”について切り出したのです。そして、
「ラジオだからって、好き勝手言って、よく怒られたな。『こんな田舎でラジオなんて入るんですか?』とか『ここは北朝鮮の短波放送とNHKぐらいしか電波は入らないんじゃないですか?』なんて言ってよ」
と、昔も今も変わらぬ安定の“たけし印”な毒ガスエピソードを聞かせてくれたのです。しかし、殿が語るNHKにまつわる思い出は、わたくしが知る限り、怒られてばっかりです。それはさておき、懐かしの叱られ話をした殿はさらに、
「のど自慢でよ、俺に鐘鳴らす係やらせてくれねーかな? 誰が来ても鐘一つくらいしか鳴らさないで、まったく合格出さないで最後までやったりしてよ」
と、いつものように、しっかりと悪ノリ発言をこちらに放り込むと、
「鐘叩こうとして自分の手叩いちゃったり、空振りしてひっくり返ったり、もうめちゃくちゃやって、つまみ出されたりするやつやりてーな」
と、うれしそうに続けたのです。この日は他にも、
「そういえば、ちょっと前に俺んとこ来て『昔、たけしさんがNHK漫才コンクールに出た時、会場で見てました』って60ぐらいのヤツに会ったよ」
と、漫才ブーム前、殿が新人時代に参戦した賞レースの話題も飛び出したのです。そして、
「そいつが言ってたよ。誰がどう見てもツービートがいちばんウケてたのに、○○が新人賞獲っちゃったから、あの時はびっくりしました』ってよ。そうだよ。あの時は『ツービートより○○のほうが先輩だし、今年賞をあげないと、もう新人じゃないから』なんて理由で○○が賞を獲ったんだよ。それで次の年も出て、やっぱりいちばんウケたのに、また年功序列で、つまんねー○○が大賞をもらったんだよ」
と、たけしマニアならよく知る“ツービート時代の悔しかった出来事”を改めて振り返り、この日の「NHKにまつわる話」をフィニッシュさせたのでした。
ちなみに、わたくし的に「殿とNHK」といえば、
「今どこの局も若いねーちゃん(女子アナ)がニュースなんか読んでるけど、北朝鮮とNHKだけはいまだにおばちゃんがニュース読んでるな」
といった発言が印象的です。他にも、某演歌歌手の紅白出演を応援するため、志村けんさんとコントをやりに行った殿が本番前、若いディレクターにネタ見せを強いられ「もう1分ネタを短くしてください」と、ビジネスライクに言われたエピソードも大好きです。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!