コロナ禍が拡大する中、開催を続ける中央競馬。今週は牝馬クラシック第一弾、桜花賞が行われるが、本来あるべき盛り上がりを期待できないのが歯がゆい。
それでも数鞍あった前哨戦、トライアルのたびにスター候補が現れ、顔ぶれはきわめて多彩だ。
本来、絶対視されると思われた2歳女王レシステンシアがチューリップ賞で3着。このよもやの敗北で勢力図は何やら大きく変わった感がある。
馬単が導入されて以降、これまでの17年間、その馬単での万馬券は4回(馬連は2回)。この間、1番人気馬は4勝(2着5回)、2番人気馬は6勝(2着4回)。1、2番人気馬同士のワンツー決着は5回あり、比較的人気サイドで決まっているように見えるが、フルゲート競馬(18頭)になることが多く、順当には収まってはいない。
今年は一昨年のアーモンドアイ、昨年のグランアレグリア(ともに2番人気)のような強力な馬が見当たらない。1番人気がどの馬になるのかを当てるのも難しいことを思えば、今回は下馬評どおりの結果にはならないのではなかろうか。
ひと波乱あり──当方も、そうニラんでいる。
まず人気どころを挙げてみよう。アネモネSを制したインターミッション、フィリーズレビューの1、2着馬エーポス、ヤマカツマーメイド。チューリップ賞の1~3着馬マルターズディオサ、クラヴァシュドール、レシステンシア。クイーンCの1、2着馬ミヤマザクラ、マジックキャッスル。さらにサンクテュエール(シンザン記念)、デアリングタクト(エルフィンS)、ヒルノマリブ(紅梅賞)と、これだけの有力候補がそろっているのである。
むろんのこと、伏兵視されている馬も多く、これはもう百花繚乱の趣だ。ならばやはり、ひと波乱ありとみていいのではないか。
穴党として最も期待を寄せたいのは、スマイルカナだ。前走のチューリップ賞は5番人気で7着。これで評価を落としたのであれば、好都合である。
420キロにも満たない小兵で、それまで4戦中3戦で逃げているように戦法は逃げ。ところが前走のメンバーは逃げ、先行馬が多く、この馬にとってどう見ても展開は不向きだった。
関西への長距離輸送も初めてで、7着といっても勝ち馬との差はコンマ5秒。ならば、むしろこの健闘ぶりを評価すべきではないだろうか。
「ハナにこだわらないといっても、前に馬を置いてのもまれる競馬は初めて。多少、折り合いを欠く場面もあって、思い描いていたスムーズな競馬ができなかった」
これは高橋祥調教師の弁だが、この小兵が初めて尽くしの中でこれだけ奮闘しているのは、ただ者でない証しである。
小柄な牝馬にしては珍しく、落ち着き払って繊細でないところがいい。また、本番と同じ舞台、環境を経験したことは大きい。
「関西までの輸送も2度目ですし、中間は、とにかく順調。問題なく本番に臨めます」
高橋祥師のコメントどおり、1週前の追い切りも軽快でリズミカル。臨戦態勢はまず万全とみてよさそうだ。
血統もよく、叔父にエイシンヒカリ(香港C、イスパーン賞)がいて、サーボウフォート(サンタアニタH)など近親、一族に活躍馬が多くいる良血。混戦に断を下すのは、この馬だ。