コロナ禍は峠を越え、終息に向かいつつあるように見える中、競馬は大きな問題もなく続行されている。その一翼を担う仕事に就いている者としては、感謝以外の何物でもない。
そうこうしているうちに、春のGI戦線はピークを迎えようとしている。
今週は3歳牝馬による頂上決戦、オークスがメインとして行われるが、桜花賞を土つかずの3連勝で飾ったデアリングタクトの「2冠」なるかが焦点だ。
菊花賞、ジャパンC勝ちのエピファネイアを父に、ダービー馬キングカメハメハが母の父。血統的にはマイルの桜花賞より距離適性があるだけに、「偉業達成は難しくない」とみられても当然。この中間も順調に調整されているとあっては、なおさらだ。
しかし、勝負は水物。その他の有力候補、伏兵陣も多彩で、包囲網はなかなか堅固。虎視眈々と一発を狙っている馬も多い。
フラワーCを制して2戦2勝のアブレイズ、忘れな草賞を勝ったウインマイティー、フローラSの1、2着馬ウインマリリン、ホウオウピースフルといった桜花賞に出走しなかった新興勢力に、クラヴァシュドール、サンクテュエール、スマイルカナ、マルターズディオサ、ミヤマザクラなど、巻き返しを図る桜花賞組の面々。顔ぶれはなかなかで、確かに「デアリングタクトで絶対」とは言い切れない。
むろんのこと、穴党としては簡単に人気、有力どころでは決まらないとみている。過去のデータからも、それは言えそうだ。
03年に馬単が導入されて以降、これまでの17年間、その馬単での万馬券は6回(馬連も6回)。この間、1番人気馬は7勝(2着3回)、2番人気馬は2勝(2着4回)。1、2番人気によるワンツー決着は4回あるが、堅く収まるか否か、両極端なレースであることは確かだ。
目下、4年連続で1番人気馬が勝利しているが(連絡みは6年連続)、はたして今年も──と、いくかどうか。大いに怪しいところではある。
穴党という立場を抜きにしても期待を寄せたい馬がいる。狙いは、スマイルカナだ。
桜花賞でも注目し、本命視したが、善戦及ばず3着に敗れた。しかし道悪にしてはハイペースの中、早めにレシステンシア(2着)に絡まれながら、よく頑張り通したと感心する。前半、もう少し余裕があったなら、際どい勝負になっていたのではないだろうか。
420キロに満たない小兵で、その勝負根性には脱帽ものだが、そんな激戦をくぐりながら大した反動もなく、この中間は至って順調というから驚く。
これまでの6戦全てがマイル戦。母の父はフォーティナイナー産駒で短距離馬。ならば距離の不安を指摘されても当然だ。
しかし、どうだろう。小柄な牝馬ながら繊細さは感じられず、どっしりと落ち着き払っているところがいい。この図太い神経がなんとも頼もしいではないか。それに母は海外のGIで2勝したエイシンヒカリの半姉。母系からは距離の不安はない。
今年もフルゲート必至とみられるが、ざっと見渡して競ってきそうな同型馬がいない。ならばハナを主張してマイペースで逃げられるはず。桜花賞より流れは当然緩くなると思われ、この馬にとっては競馬がしやすいことは間違いない。
1週前の追い切りも軽快かつリズミカル。晴雨にかかわらず、大きく狙ってみたい。