「やっぱり貫禄あったね」
先日、自身のレギュラー番組「新・情報7daysニュースキャスター」の中で、俳優・渡哲也さんとの思い出を聞かれた殿は、まず北野映画「BROTHER」に出演された時の思い出を振り返ったのです。
「BROTHER」撮影時、“ヤクザの事務所に住み込みで働く若手B”という役で撮影現場に参加していたわたくしも、チラッとですが、渡哲也さんを目にすることが叶い、その迫力とかっこよさに大変しびれたのを今でもよく覚えています。
で、殿は「渡さんから教わったこと」とていねいに断りを入れたうえで、エピソードを続けたのです。
なんでも昔、ラグビーの松尾雄治さんと殿がとあるお店で飲んでいると偶然、渡さんがお店に入ってきたため、殿はすぐさまご挨拶をし、続けて「今日は松尾の誕生日で飲んでいたんです」と告げたといいます。渡さんは「そうですか」と言って、ほどなくして帰っていかれたそうです。
その後、殿もそろそろ帰ろうとお会計をお願いすると、すでに渡さんが殿の分のお支払いをされていて、さらに「誕生日おめでとう」とのメッセージが添えられた花束が店に届けられたといいます。
この時の渡さんの“素敵な心遣い”にいたく感動した殿はそれ以降、飲み屋などで後輩の芸人やタレントに遭遇すると、自分も素敵な心遣いをマネるようになったと語っていました。
わたくしも殿の付き人時代、殿が後輩芸人などに素敵な心遣いを実践してる姿を何度も目撃しています。
そんな“たけし版・素敵な心遣い”で一番印象に残っているのは、90年代後半に巻き起こった“ボキャブラブーム”に乗っていた多数の芸人たちと六本木のお好み焼き屋で出くわした際のこと。殿はいつものように素敵な心遣いをサラッと発動して店を後にしました。
が、この時、おそらくお店の方が「たけしさんが払ってくれて、今帰るとこですよ」的なことを伝えたと思われ、ボキャブラ組のみなさんが一斉に店外まで出てきて、殿を見送る形となったのです。
殿はそんなボキャブラ組に軽く会釈してロールスロイスの後部座席に乗り込むと、車が発進する直前、ウィンドウを開け、
「あんちゃんたち、売れたら使ってね」
と声をかけ、その場をさっそうと立ち去ったのでした。殿と渡さんの思い出に話を戻します。
「ニュースキャスター」で渡さんとの思い出を語った殿に放送後、「殿、そういえば殿も渡さんも、ジョージ秋山さんの漫画『浮浪雲』の実写版ドラマをやってるんですよね(渡さんのバージョンは78年放送。殿のバージョンは90年放送)」と、お伝えすると、
「そう。渡さんの『浮浪雲』は当たって、俺のほうのはまるっきしダメで、周りから“たけしのは『はぐれ雲』じゃなくて『はずれ雲』だ!”なんて指差されたんだから」
と、笑顔で振り返っていました。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!