バラエティー番組などで常々、「毎日、ゆで卵が食べられることが贅沢です」と語っていた板東英二。その個人事務所が名古屋国税局の税務調査を受け、05年から7年間で約7500万円の申告漏れを指摘されたのは、12年12月のことだ。
板東は88年に国税局のPR役に起用されて以降、23年にわたって「期限内に確定申告は済ませましょう!」とアピール。名古屋国税局から感謝状まで送られる、いわば「納税の顔」だった。
このスキャンダル報道を受けて、出演番組は全て出演見合わせ、あるいは降板が決まり、芸能活動を休止。板東の姿は表舞台から忽然と消えることになる。
ところが、そんな騒動から11カ月が経過した翌13年11月10日、板東が会見を開き、そこで飛び出したのが、その後にギャグになる「植毛ネタ」だったのである。
会見の冒頭、世間に迷惑をかけたことを謝罪。続いて申告漏れの具体的内容を問われ、「はい、あの、私…」と一瞬口ごもったかと思うと、
「実はこの20年近く、植毛をやってまいりました。カツラが経費で落ちるとは聞いておりましたので、当然、植毛も落ちると思っておりまして」
とカミングアウトし、報道陣から失笑を買うことに。
というのも、板東の申告漏れは、7年間で7500万円。いくらなんでも、その金額を植毛手術に結びつけるには無理がある。だが、唖然とする会場の空気をヨソに、悪びれる様子もない板東は、
「しかし美容整形と同じで、経費にならないと初めて知りました。無知でした。植毛がかなりの金額だったので…」
最後まで「原因は植毛」との主張を押し通したのだった。
そこで、植毛を専門にする美容クリニックを取材すると、こんな答えが返ってきた。
「個人差はあるものの、通常、植毛の相場は年間150万円ほど。ですから、7年とすれば、合計金額はおおよそ1000万円ほどではないでしょうか」。
さらに、税理士によれば、
「確かにカツラは『舞台衣装』でもあるため、経費で落とすことはできます。ただ、植毛は仕事とプライベートの境目が難しいため、経費と認められるケースは少ないのでは。7年前以前から植毛していたのであれば、その経費も申告漏れになってしまいますから、説明に無理があるように思います」
最後には、
「働くこと以外に能のない男です。厚かましいお願いですが、背中を押して、前から手を引っ張っていただいて、仕事をするチャンスをください」
と懇願した板東だったが、残念ながら問題の本質すり替えともとれる「植毛ネタ」に説得力はなく、違和感しか残らない会見となったのである。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。