19年に、第2子となる女児が誕生。昨年10月には子育てと並行しながら、映画「天間荘の三姉妹」の主題歌となった玉置浩二とのデュエット曲「Beautiful World」を発売。今年6月からは全国ツアーもスタートすることを発表した──。シンガーソングライター・綾香のことである。
綾香が夫・水嶋ヒロとの電撃結婚を一部スポーツ紙にスッパ抜かれ、急遽、記者会見を開いたのは、09年4月3日午後9時だった。
150人を超える報道陣が詰めかける中、水嶋は濃紺のジャケットスーツ姿。綾香も同色のワンピースで登場した。
2人の出会いは05年11月、まだCDデビュー前で無名だった綾香のライブに、水嶋が足を運んだ。綾香が水嶋出演ドラマの主題歌を歌ったことで、ファッション誌での対談につながり、それをきっかけに交際に発展。2カ月後には写真誌「FRIDAY」により「相合い傘デート」が報じられる。この時点で2人は結婚を決意しており、双方の所属事務所「研音」に直談判したという。
しかし、片やドラマなどで人気上昇中のイケメン俳優。片やデビューシングルがオリコンチャート初登場で3位に輝き、NHK紅白にも3年連続出場するドル箱アーティストだ。当然ながら「ハイそうですか」と快諾されるはずもなく、事務所は結婚に大反対。
だが、燃え上がった2人の恋の炎を消し去るのは難しかった。2人は双方の親に結婚の意思を伝え、年明けには同居。事務所には黙ったまま、2月22日に入籍するという離れ業をやってのけたのである。
会見で水嶋は、
「お互いの両親だけにしか伝えていませんでした。事後報告することで(結婚が)叶うんじゃないか、と思った」
既成事実を作れば、あるいは…という気持ちがあった、と告白したのだ。さらに綾香も、
「1曲歌うだけで息切れして、歌えないんです。持病としっかり向き合っていかなきゃいけない時期なのかなと」
なんと、バセドー病を患っていることを公表し、翌年からは無期限で活動停止すると発表。今後は家庭に入り、水嶋をサポートしながら闘病に専念する、と説明したのである。
すったもんだの挙げ句、水嶋は翌10年9月をもって、研音を退社。同時に綾香の退社も伝えられたが、当時取材したテレビ局関係者の、こんな言葉を覚えている。
「表向き、事務所は『(水嶋は小説家としての)執筆活動に専念するため』としていますが、事実上の解雇であることは明らか。綾香は理由が闘病ということで、デキ婚ほどイメージ低下には繋がらなかったものの、やはり事務所のドル箱に手を出した水嶋への風当たりは強かったということでしょうね」
水嶋は10年12月に発売された、本名の「齋藤智裕」名義で執筆した処女小説「KAGEROU」で、第5回ポプラ社小説大賞を受賞。ともあれ、芸能界の歴史に名前を残す「既成事実婚」だったのである。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。