KFC(ケンタッキーフライドチキン)は好きだろうか。1970年の大阪万博にアメリカKFCの実験店として初上陸し、70年11月には名古屋市西区に全国1号店となる名西店がオープンした。その後、日本中を席捲する勢いで店舗が増え、現在は1172店舗に。直営店舗のパートナー数は1万1103人と発表されている。向かうところ敵なしのようなKFCだが、
「私も家族もKFCが好きだったんですが、この街に引っ越してきてKFCがないので、ガッカリしました。知人の奥さんによると、過去に出店したようですが、売り上げが伸びず撤退してしまったようなんです。それも2回ですよ。そんなことがあるんだと驚きました」(50代主婦Hさん)
Hさんが暮らしているのは、大分県の中津市である。中津からあげとして有名な街であり、市内にはからあげ店が数十軒もあるという、からあげの聖地でもある。奇遇なことに、KFCが大阪万博で日本に初お目見えした時期に、中津のからあげ店も誕生した。それが「総本家もり山三光本店」である。ニンニクタレを十数種の調味料と合わせ、塩ベースの味にして揚げることで人気が出た。
2019年の「からあげグランプリ」では「もり山万田本店」がグランドチャンピオンに輝き、中津からあげの存在が全国的に知れ渡ったのである。
「塩や醤油など味はお店によって異なりますが、自分好みで贔屓のお店を市民たちは持っていますね。ここではからあげはお店で買ってくるもののようで、それも驚きました。自宅で揚げるという習慣はないんですね。ただ、お店では揚げたてのからあげが買えますし、子供たちもKFCがないことに不満を言わなくなりました。でも私はたまにKFCが食べたいと思うこともあるので、他の街に行ったついでにKFCに寄ることがあります」(前出・Hさん)
市内の主婦たちにも、からあげ店が多い点は好評のようだ。
「うちは共稼ぎなので、料理に困った時にはからあげ店に予約をしておいて、時間になったら受け取りに行くだけです。揚げたてアツアツのからあげが手に入るし、主人のビールのつまみにもなるし、子供には翌日の弁当のおかずにもなります。からあげを入れておけば子供は文句を言わないから、本当に楽で助かっています」(40代看護師Aさん)
順風満帆に見える中津のからあげ店だが、ここにきて心配な点も指摘されている。そのひとつが、物価高による値上げだ。揚げ油をはじめとして、ガス代も上がってしまい、値上げせざるをえなくなった。さらに鳥インフルエンザの影響で、殺処分が何十万羽もなされている。中津のからあげ店の多くは地元の食材にこだわっているが、品質を維持するのが今後の課題となることだろう。