今年のオールスターゲームは、久々に見応えがありました。中でも2戦目に先発した日本ハム・大谷のパフォーマンスは突出していました。オリックス・金子の変化球を駆使した投球術もすばらしいものでしたが、それも大谷の真っ向勝負のあとだったからこそ映えたのです。162キロのストレートにはドギモを抜かれました。まだ高卒2年目。ケガさえなければ歴史に残る選手になるはずです。
驚かされたといえば、長崎で行われた二軍のフレッシュオールスターでも衝撃を受けました。西武のドラフト1位ルーキー・森の打撃です。まったく軸のブレないパワフルなスイングは、一軍でも通用するはずです。
私は彼のことを過小評価していたのかもしれません。身長170センチの小さな体に筋肉をつけすぎているため、プロでは伸びしろがないと思っていたのです。今年2月に二軍の練習試合のプレーを見た時も同じような感想を抱いたのですが、この5カ月で目に見えて成長していました。守備面も含めて順調に成長すれば、日本球界を代表する捕手になってくれるのではないでしょうか。
さて、その球宴も終わり、ペナントレースは後半戦が開幕しました。あらためて前半戦の折り返し順位を見ると、セ・リーグは巨人、阪神、広島、中日、DeNA、ヤクルトの順番です。首位の巨人から4位の中日までは7ゲームで、これから8月、9月の戦いしだいでは十分に逆転可能です。チーム防御率、チーム打率の数字を比較しても、上位4チームはほぼ同じ。巨人が圧倒的な強さで首位に立っているわけではないのです。
今年の巨人の戦いぶりは、むしろ誤算だらけと言えるでしょう。攻撃陣は阿部をはじめ、村田、坂本、長野ら誰一人として納得のいく成績を残している選手はいません。昨季は盤石の安定感を誇ったマシソン、山口、西村の勝利の方程式も思うように機能していません。加えて先発投手でもエース内海の離脱。Bクラスにいても不思議ではないチーム状況だったのです。
唯一の光となったのが菅野です。先発の柱として中5日でフル回転し、ローテーションを守りました。前半戦を終えた時点での成績は9勝4敗、防御率2.15。勝ち星は広島・前田と並ぶリーグトップ、防御率は同2位、投球イニングも阪神・メッセンジャーに次ぐ数字です。入団2年目でエースの称号を手に入れたと言えるでしょう。
原監督も菅野の存在があるからこそ、余裕を持って戦えている面があります。打順を猫の目のように変え、守備でも外野2人、内野5人で守る奇策も試すなど、動きすぎるぐらいです。これは焦りではなく、むしろ今年の戦い方をじっくり模索しているようにも感じます。見据えているのはセ・リーグ3連覇ではなく、昨年、楽天に奪われた日本一の奪回です。短期決戦でも勝ち抜ける「形」を探し続けているのでしょう。
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