一昔前までは結核と並び不治の病とまで言われ、死亡率も高く恐れられていた脚気。食生活の向上とともに大幅に減少した病だったが、それが近年ふたたび増加傾向にあるという。しかも大酒飲みのお父さんと若年層に顕著なのだという。症状が似ていることから夏バテとも間違えられる脚気だが、ちょっとした食の改善で防げる!
「しっかり寝たのに疲れがとれない」、「全身がだるい」、「倦怠感を覚える」、「食欲がない」、「足がむくんだりしびれたりする」──。
今の時期、一見夏バテと思ってしまいがちな、こんな症状が脚気かもしれないという。管理栄養士で各地で講演活動も行っている佐藤美香氏が言う。
「夏はビタミンB1が消耗しやすい季節なんです。というのも、ビタミンB1は糖を分解してエネルギーを作り出す働きをしますが、夏場は食欲がなくなり、手軽に摂取できる半面、糖質を多く含む麺類や清涼飲料水などを多くとるため、ビタミンB1もそのぶん消耗するわけです。しかもビタミンB1は、汗とともに失われやすい性質もあります」
このビタミンB1の欠乏で起こるのが脚気だ。栄養に関する知識が乏しく、十分な栄養もとれなかった時代に起きた日露戦争では、5万人近くが戦闘で死亡しているが、脚気によって、さらに戦地で3万人近くが死亡しているのだ。
栄養過多の今の時代に脚気は無縁のように思われる。しかし、前述した清涼飲料、麺類に加え、糖質を多く含むインスタント食品、アルコールの過剰摂取という偏った食事が原因で、糖の代謝に必要なビタミンB1が欠乏。その結果、脚気になるケースが増加しているという。
この脚気、まず、倦怠感、両足のむくみや麻痺、下痢、体重減少などの症状が現れ、重症になると、心臓の肥大から心不全により死亡に至る。予防には、ビタミンB1を多く含む豚肉、卵黄、豆類やビタミンB群を吸収しやすくする作用があるニンニクやネギを摂取するとよい。心配な向きは自己診断を。もしひざの下を木槌などで叩いて反応がなければ要注意!