ただし、非情なだけではないところが、帰ってきた岡田監督の真骨頂でもある。球界関係者が言う。
「オリックスの監督時代(10~12年)までは、ここまで饒舌じゃなかった。監督を辞めてデイリースポーツの評論家になってから変わったんです。当時の現場では、喫煙室に行っては他紙の記者も含め誰彼構わずペラペラしゃべっていました。昔は選手との対話なんてまったくなかったそうですが、今季は佐藤や青柳、西にしても、調子が悪ければじっくり話したり、打順変更の際にきちんと理由を説明するようになったようです」
選手を誉めることも多くなったのだが、その誉め方にはやはり、岡田流のユーモアがちりばめられている点も見逃せない。
例えば4月19日の広島戦。1番打者の近本光司(28)が三塁打を2本打ち、6-1の勝利に貢献すると、
「1本目打った後に言うたんよ。(シングル)ヒット打たんと走られへん(盗塁できない)で、って。そしたらまた打ちよった。走られへんなあ、アイツもう」
同12日、巨人戦で先発の村上が7回パーフェクトの投球を見せるも交代の指令。試合後には、記者から「完全試合の空気を感じたか」と質問され、
「どういう感じもクソも、1-0で勝ってるわ、と思っとった」
と茶目っ気たっぷりに返している。そんな現在の岡田監督を見た阪神OBは、
「だいぶ丸くなった」
と口をそろえて評するという。現役時代から岡田監督を知る真弓氏が語る。
「昔からおしゃべり好きではあったと思いますよ。ただ、ユニフォームを着ると手はまったく抜かないタイプでした。練習はものすごく真面目にやるし、自分より若い選手に色々教えたりとリーダーシップもあった。反面、切り替えがうまい、というんですかね。僕らの現役時代は海外キャンプがあったでしょう? 彼は練習が終わると、ホテルでサッとシャワーを浴びてそのまますぐにゴルフに行ったり、そういうメリハリはありましたね(笑)」
かつては必要以上に厳格であろうとしただけに、果たして今見せているのが本当の岡田監督なのか。事実、こんな証言もある。
「今回の再就任後、番記者が岡田監督に集められて『なあお前ら、うちの悪いことあったら、遠慮せんと全部書けよ』と言われたんです。批判もまっとうならば受け止める、と。元来、阪神はそういう批判をするマスコミにうるさい球団だったから、これには驚きましたよ」(球界関係者)
裏表のないおもろい大阪のオッサン、というと失礼だが、緊張感を保ちつつ阪神ベンチの雰囲気がいいのはそんな性格も影響しているはずだ。