「何だこれ? お前は浅草か!」
これ、酒席にてお酒の大変強い殿が、珍しく弟子が作った焼酎の水割りが“濃い”と感じた時に発するツッコミです。
要するに、殿が若かりし頃修行された浅草の飲み屋では、“恐ろしく濃いチュウハイを当たり前のように飲んでいた”といった、殿の思い出をベースとしたツッコミです。
他にも、番組などでたまにある“試食コーナー”などで、怪しい肉料理や、やたら硬いお肉なんかを口にした時などは決まって、「浅草と変わってねーな!」だの「これは浅草だろ!」と、やはり「浅草」といったキーワードを出されてツッコむことが多々あります。昔の浅草の一杯飲み屋あたりでは、煮込みなんかに何の肉だかよくわからない、怪しい肉が紛れていた、といった殿の実体験が元になっている、独自の言い回しです。こういった殿のツッコミや言い回しに共通するのは、“浅草で修行をしていた頃は、とにかく体に悪そうな物にまみれていた”といった記憶なのです。
そこで今回は、殿が浅草修行時代に経験した、“体に悪そうな物あれこれ”について書かせてください。
まずは、浅草修行時代、本人いわく「死ぬほど食った」煮込みについて──。
「煮込みに入ってた肉があんまり硬いんで、よく見たら『ブリヂストン』と書いてあった」
「煮込みの味がおかしいから『何だこれ、犬や猫の肉使ってんじゃねーか』って大将に詰め寄ったら、『お客さん、犬や猫の肉使ってたらこの値段じゃ出せませんよ』って逆に怒られた」
「浅草は何でも煮込んじゃうから、鳩まで煮込んで鍋の中で鳩が首だけ出して、風呂に浸かってるじじいみたいになってよ。『ホロッコ』って鳴いてたんだから」
このあたりの話は、酒席などでたびたび聞いたことのある、“たけしの煮込み定番話”です。
しかし煮込み1つとっても、これだけ“面白漫談”があるのですから、毎度毎度、驚くばかりです。ちなみに当時、煮込みの値段は15円だったといいます。
で、煮込みときたら、お次はやっぱり殿が修行時代に浅草でしこたま飲んだ、「酒」の話に移りましょう。
殿がまったく金のない頃、通っていた一杯飲み屋には、アルコール度の高い順に、「爆弾」やら「ダイナマイト」やら、妙な呼び名があって、その最上級に、「ポコポコ」といった呼び名のお酒があったそうです。
なお、殿がこの「ポコポコ話」をする際は、時により、その擬音が「ペコペコ」だったりと変わることがあるのですが、ここでは、わたくしが直接最も多く聞いた、“ポコポコバージョン”に統一して、話を進めたいと思います。
「昔、浅草にポコポコって酒があってよ。あんまりキツイ酒だから滅多に出ねーんだけどよ。それでも半年に一回くらいは頼む客がいるんだよな。客が『大将、ポコポコある?』って言うと、店の大将がニタッて笑って『あるよ』って言ってよ、周りの客も『うお~!』ってなるんだよ。
そしたら大将がカウンターの下で、ミシンの修理の時に使うようなデカいスポイトみてーな油さすやつを出してきてよ。そのスポイトで怪しい酒を吸い出してコップに入れてくれるんだよ。その時の音がポコポコっていうからポコポコって言うんだけどよ。それが凄いんだ。飲んだ奴がみんなストーンって後ろに引っくりかえるんだから。もう工業用アルコールなんてもんじゃないんだから‥‥」