いまだ野球部が休部状態である高校野球の名門・PL学園。これまでプロ野球選手を80人以上も輩出しているが、指導者として成功した人物は皆無だ。いったい、なぜか。
「厳しい上下関係の中で育ち、体育会気質が抜けないのです。自分の野球観に自信を持っているので、他人に任せることができない側面もあるようです」
アマ、プロ球界を熟知するベテランスカウトは、そう話す。来季から楽天はPL学園出身の今江敏晃監督が指揮を執る。巨人ではOBの桑田真澄2軍監督が誕生した。今江、桑田両監督がジンクスを断つか。はたまた片岡篤史2軍監督が1軍ヘッドコーチに昇格し、PL同期コンビでチームを運営する中日が巻き返すか。
2年連続最下位となった中日では、PL出身の立浪和義監督のテコ入れ策が片岡ヘッドと決まり、中日ファンから「PLはダメなんだよな」とため息が漏れた。
PL出身者の「初代監督」は尾花高夫氏。横浜の指揮官として2010年、2011年の2季連続最下位で解任された。「2代目」は楽天で指揮を執った平石洋介(現・西武ヘッドコーチ)。2019年は3位とAクラスになったが、それでも解任されている。そして「3代目」が立浪監督で、ご承知のような結果だ。「4代目」の西武・松井稼頭央監督は今季5位。パッとしない。
評判がよかったのは平石監督だった。唯一のAクラス入りで、その後、ソフトバンクのコーチとしても実績を残した。
「PLでは控え選手ながら、主将だった。楽天に入団して、選手としての実績はないが、人の気持ちを理解できるタイプで努力家。星野仙一氏も『平石は将来の監督候補』と高く評価していた」(楽天関係者)
前出のベテランスカウトは、ヤクルトでヘッドコーチ経験のある宮本慎也氏が典型的だという。現役時代から信望が厚く、監督候補だったが、コーチとしては鬼ヘッドに終始し、
「理論的には素晴らしいし、言っていることは正しいが、この人についていきたい、という気にさせる雰囲気を作れない。参謀、コーチ止まりなんですよ」
不思議なことに、PLはPLを呼ぶ。松井監督が平石ヘッドを起用し、立浪監督が片岡ヘッドを据えた。
「PL語を理解できる人を側に置きたい。逆に言えば、独特のPL学園寮生活で培った野球観は、経験した人でないと理解できない。そこに限界があるのだろう」(前出・ベテランスカウト)
PL出身監督は優勝できないのか。新たな歴史を作るのは今江新監督か、立浪監督か。あるいは桑田2軍監督が1軍監督に昇格した時に達成するのか。
(健田ミナミ)