日本卓球協会が揺れている。パリ五輪選考レースの最後の大会となった全日本選手権(東京体育館)が1月28日で終了した。男女各2枠あるシングルス代表の女子では、最新の世界ランクでも日本人で2番手につける伊藤美誠が6回戦で敗退したことで、早田ひな、平野実宇が確定になった。
伊藤は3枠目の団体戦代表選出の有力候補でもあるが、「団体戦は選出されても出るかどうかハッキリ決まってない」と辞退を示唆。この発言を受け日本女子代表・渡辺武弘監督は「こっち(卓球協会強化本部)で一番勝てる選手に出てもらう」と、伊藤に意思確認は一切しないことを強調した。
卓球日本代表は前回の五輪までシングルス代表は「最新世界ランクの上位2名」を選んでいた。卓球王国・中国は女子の最新ランクでもベスト10に6人が入り、日本は早田(5位)、伊藤(10位)の2人がいる。本来であれば伊藤はパリ五輪の出場の切符をすんなり手に入れることができたはずだが、選考方法が大幅に変更。約2年間かけて国内選考会を増やし、2017年に開幕したセミプロリーグ・Tリーグへの出場も選考会に入れた。ただ、昨季はコロナ禍がおさまらないとはいえ、1試合の平均観客動員は690人と苦しんでいる。
「五輪選考を兼ねることで盛り上げようとしましたが、これによって選手のハードスケジュールが問題になった。五輪でメダルをとる最強メンバーではなく、五輪に出られるレベルのメンバーが選ばれるという皮肉な状況になっている」(卓球担当記者)
この選考法に当初から異議ありと唯一発信していたのが伊藤だった。「選手が練習できる時間が減っている」と、2年間続いた五輪選考会のやり方に疑問を呈していた。
しかし結果、小学生の頃から1日7時間以上という質も量もハイレベルな練習を重ねてきた伊藤にとって練習不足が致命傷になり、臀部痛などの故障も続き満身創痍の状況で選考会に出場を続けていたのだ。
3枠目の団体戦代表には男子のエース張本智和の妹・美和が全日本のシングルスで準優勝。「僕は何もできないか、兄として、一選手として妹が3枠目に相応しい」と日本卓球史上初となる兄妹五輪出場をアピールしていた。注目の発表は2月5日だ。
(小田龍司)