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新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「鶴田時代終焉! 全日本マットで突然の世代交代」

 1990年の天龍源一郎らの選手、レフェリー、スタッフの大量離脱で存亡の危機に立たされた全日本プロレス。しかし、怪物的な強さを発揮するジャンボ鶴田に三沢光晴、川田利明、小橋健太(現・建太)らの超世代軍が真正面から挑む新たな図式は若いファンの共感を呼んだ。

 気づけば、80年代後期の全日本を隆盛に導いた鶴田と天龍の鶴龍時代からファン層がすっかり若返った。

 当時の超世代軍の爆発的な人気を故・仲田龍リングアナウンサーは「お客さんに対して感謝しかなかった。天龍さんが抜けて2シリーズはダメだったけど、3シリーズ目から盛況になったからね。普通は東京でお客さんが入ったとしても、地方に浸透するのには半年ぐらいかかるんだけど〝ある日、突然に!〟っていうぐらい爆発的に人気が出たよね。どんな田舎に行ったって、最低でも前売りで1000万円売れたんだから。営業の人間が〝1000万円売れてなかったら恥ずかしい〟って。それまで鶴田さん、天龍さん、長州さん‥‥みんな揃っていても武道館の上まで埋まらなかったのが、埋まるようになったんだからね。武道館で当日売るチケットがないんだから」と語っていたものだ。

 大ダメージを受けた90年のプロレス大賞は、タイガーマスクから素顔になって超世代軍の先頭に立った三沢光晴が殊勲賞を受賞しただけだったが、91年は鶴田がMVPに輝き、三沢&川田の超世代軍が最優秀タッグ賞を受賞して、全日本の充実ぶりを証明した。92年にはスタン・ハンセンVS川田(6.5日本武道館)がベストバウトに選出され、三沢光晴は特別大賞を受賞した。三沢は同年8月22日に日本武道館でハンセンを撃破して、30歳にして初めて三冠ヘビー級王座を奪取したのである。

 三沢は春の祭典「チャンピオン・カーニバル」で決勝戦に進出。ハンセンに敗れて優勝はならなかったものの、4月2日の横浜文化体育館における鶴田との公式戦は30分時間切れ引き分け。これが最後の鶴田VS三沢になってしまった。

 7月、全日本に不穏な空気が流れる。「サマー・アクション・シリーズ」を鶴田が左足首の古傷を悪化させたために全休したのだ。鶴田の欠場は、85年8月5日の大阪城ホール大会を右肘の緊急手術で欠場して以来7年ぶりのことだ。

 8月の「サマー・アクション・シリーズⅡ」で復帰したが、7年前の右肘の手術の際の血液検査で、母子感染のB型肝炎のキャリアだということが判明。ウイルスを撃退するために86年後半頃からインターフェロンの投与を始めるも、肝機能の状態を測るGOT、GTP値が上昇して昭和大学病院に検査入院していたというのが真相だ。

 たった1シリーズだが、鶴田の欠場によって時代は動いた。前述のように三沢がハンセンから三冠王座を奪取した8月22日の日本武道館で田上明と組んでテリー・ゴディ&スティーブ・ウイリアムスと対戦した鶴田はゴディのパワーボムに敗れたのである。

 10月21日、日本武道館における「ジャイアント・シリーズ」最終戦の全日本創立20周年記念大会。メインは三沢の三冠王座に川田が挑戦する超世代軍対決、セミには馬場&ハンセン&ドリー・ファンク・ジュニアVS鶴田&アンドレ・ザ・ジャイアント&ゴディという全日本20年の歴史を彩った選手によるドリーム6人タッグが組まれた。

 だが、実は馬場が考えていたのは三沢VS川田の三冠戦と、鶴田&田上の世界タッグに馬場&小橋の師弟コンビが挑戦するという2大タイトルマッチだった。20年目の節目にあたって全日本の未来を見せる三冠戦を組み、世界タッグでは鶴田に〝馬場超えの最後のチャンス〟を与えようとしていたのだ。それまで馬場がピンフォールを許したのは天龍だけ。窮地に立たされた時に怪物王者として全日本を守ってくれた、鶴田にバトンタッチしてもいいという思いがあったようだ。

 ところが鶴田の体調が思わしくなかったためにスペシャル6人タッグに変更。そして、この試合を最後に鶴田は第一線を退く。続く「’92 世界最強タッグ決定リーグ戦」の開幕前日の11月13日、馬場が緊急記者会見を開いて、内臓疾患による鶴田の欠場を発表。病名は明かされなかったが、B型肝炎が発症したのである。

 田上のパートナーには9月17日にデビューしたばかりの秋山準が抜擢された。専修大学レスリング部主将だった秋山は、将来のエースとして馬場が自らスカウトした男。時代は急ピッチで動き始めた。

 翌93年4月に川田が超世代軍を離脱して5月から田上と聖鬼軍を結成。全日本は鶴田軍VS超世代軍から超世代軍VS聖鬼軍に変わり、三沢、川田、田上、小橋の四天王時代が到来した。

 鶴田は同年10月23日の日本武道館の第4試合で367日ぶりに復帰したが、第一線のリングに立てるコンディションではなかった。

 全日本はごく自然な流れで世代交代したのだった。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

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