自民党の政治資金パーティー裏金問題に絡み、キックバックの金額が最多の約3500万円だった二階俊博元幹事長の処分が焦点となる中、自らいち早く動いた。
3月25日午前10時30分から自民党本部で記者会見に臨んだ二階氏は、二階派の元会計責任者らが政治資金規正法違反の疑いで立件されたことなどから、
「政治責任は全て、監督責任者である私自身にあることは当然のことだ」
と述べ、次期衆院選には立候補しないと明らかにしたのである。
これによって、立場が危うくなってきているのが、岸田文雄首相だ。二階氏が責任を取る形で退く意向を示したことで、「同じく派閥会長だった岸田首相も、ともに辞めるべきだ」というメッセージともとれる。岸田首相としても「自分は違う」とは反論しづらいのではないか。
岸田首相は2021年9月の自民党総裁選に出馬した際、総裁を除く党役員の任期を「1期1年、連続3期まで」にするよう主張した。当時は制限がなく、幹事長を5年務めていた二階氏を念頭に置いた発言だった。二階氏は「日ごろ聞いたことがない。岸田氏が言ったからどうしなきゃいかん、そんなことはない」と反発したが、岸田氏が自民党総裁となり、非主流派に転落した。それ以降、岸田首相と二階氏の間にはわだかまりが残っている。
岸田首相は最大派閥だった清和政策研究会(安倍派)の塩谷立座長をはじめ、安倍派幹部を中心に「党の歴史上にない大量の処分」(党幹部)に踏み切る考えを示している。当初、岸田首相の念頭にあったのは安倍派だったが、ここにきて、焦点は二階氏の扱いへと移っていた。
二階派の会計責任者、そして二階氏の秘書は、政治資金収支報告書への不記載で立件されている。首相も岸田派会長を務めていた際の不記載で、派閥の会計責任者が立件された。
岸田首相は自身の責任は免れないと判断しているが、衆院選不出馬や議員辞職などまるで念頭にない。
「処分案のひとつである選挙での非公認について総裁も対象になったら、選挙で動くに動けなくなり、総裁を続けるのは困難。総辞職は免れない」(閣僚経験者)
「道義的責任」を言い出した首相だが、ブーメランとなって自らに跳ね返ってきている。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)