簡単ではないが、負けるわけにはいかない。
パリ五輪アジア最終予選を兼ねたU-23アジアカップ(4月15日~5月3日、カタール)に挑む、U-23日本代表メンバーが発表された。
日本はこれまでアトランタ大会(1996年)から7大会連続で出場しており、世論は五輪に出て当たり前という風潮もある。だが今回は、かなり厳しいと言える。
ワールドカップのアジア枠が2026年北中米大会から8.5に増えたのに対し、五輪のアジア枠はわずか3.5。予選を勝ち上がった16カ国が4チームずつ4グループに分かれてリーグ戦を争い、各グループの上位2カ国が決勝トーナメントに進出する。決勝まで勝ち進んだ2カ国と、3位決定戦に勝った国を入れた3カ国が本大会出場となる。さらに4位の国が、アフリカ4位のギニアとプレーオフを戦う。
昨年11月の組み合わせ抽選で、日本は韓国、UAE(アラブ首長国連邦)、中国と同グループに入った。海外メディアの中には、日韓が同グループに入ったことで「死のグループ」と呼ぶところもある。普通なら1カ国ぐらいは確実に格下の国が入り、主力選手を休ませることができたが、今回の組み合わせでは手を抜ける相手はいないかもしれない。
日本の試合日程は中国、UAE、韓国の順。中2日での3連戦というハードスケジュールだけに、2連勝して決勝トーナメント進出を決め、3戦目の韓国戦では主力選手を休ませるのがベストだろう。決勝トーナメントに進出すれば、準々決勝の相手はAグループの1位か2位。開催国のカタールか、安定感のあるオーストラリアになるはずだ。
だが、ここからは我慢比べ。どの国にもチャンスがあると思った方がいい。そのくらい、レベルの差はない。
今回のU-23アジアカップは、協会が選手を招集できる国際Aマッチデーではないため、欧州でプレーしている選手は各クラブと個別に交渉し、なんとか5人の海外組を招集できた。それでも前回の東京五輪メンバーに比べると、小粒感は否めない。
だが、期待できる選手はいる。DFなら西尾隆矢(セレッソ大阪)だ。各年代の代表にも選ばれており、C大阪ではポジションを奪って3シーズン目。経験が少ない選手が多い、最終ラインの中心になれる選手だろう。
中盤では藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)と松木玖生(FC東京)だ。藤田はこのチームが立ち上がった当初から、キャプテンマークを巻いて出場してきた。パスセンスがあり、ゲームメーカーとして期待したい。20歳の松木は、将来の日本代表を背負う逸材。藤田とともに、攻守の要になれる選手である。
もうひとり、FWの細谷真大(柏レイソル)を挙げる。一瞬のスピード、体の強さ、決定力を兼ね備え、A代表でもゴールを決めている。心配なのは今季、Jリーグでまだ点を取っていないこと。それでも、どんな形でもいいから点を取れれば、波に乗っていけるはずだ。
今回の予選は、かなり厳しい戦いになる。それでも連続出場をここで止めるわけにはいかない。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。