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新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「猪木引退1カ月後、全日本が東京ドーム初進出」

 新日本プロレスが日本縦断ドームツアーを成功させた1997年、全日本プロレスは年内ラスト興行となる12月5日の日本武道館でサプライズを仕掛けた。

 第4試合終了後、電光掲示板にお馴染みの「満員御礼」に続いて「25周年にあたる今年1年へのご声援本当にありがとうございました。来年は東京ドーム開催に向けてさらに躍進いたします ジャイアント馬場」の文字が浮かび上がり、超満員1万6300人の大観衆を狂喜させたのである。

「来年1年の日本武道館のスケジュールをキャンセルするつもりはないし、その間でドームをやってファンサービス ‥‥〝全日本のファンでも東京ドームで観られますよ〟ということで、ドームだから儲けなきゃいけないという感覚はない」と馬場。そして年明け年1月2日の後楽園ホールで、5月1日開催が発表された。

 全日本の東京ドーム初進出が決定するや、様々な反応があった。新日本の藤波辰爾が「カードは一任するので、ぜひ出場させてもらいたい。両団体にいい形で橋を架けられたらいい」と発言して、新日本の役員会でも主張。大仁田厚は「馬場さん、東京ドームで電流爆破マッチをやりましょう」とアピールし、相撲で田上明の1年先輩の元横綱の北尾光覇(光司=双羽黒)も参戦表明した。

 藤波は両団体間の事情で参戦を断念、大仁田の電流爆破も実現しなかったが、代わりに大仁田がFMW内で結成していたユニットのZENからザ・グラジエーター、黒田哲広、保坂秀樹の3人を送り込むことができた。田上北尾の一騎打ちは、一度は発表されたものの、カード編成の都合で流れている。

 また日本テレビがビッグサプライズとして、90年4月に退団した天龍源一郎の起用を馬場に要請したという情報も流れた。

 天龍の全日本復帰については以前触れたように、96年10月から筆者が仲介して交渉が進められた。97年1月4日に銀座東急ホテルでプロレス大賞授賞式が行われた際、馬場と天龍が所属するWARの武井正智社長の会談がコーヒーラウンジで実現。オープンな形での会談は「報道された後のウチの選手、社員の反応を確かめたい」という馬場の希望によるもので、翌日、スポーツ紙に「天龍、全日本復帰か?」の先走った記事が掲載されると、全日本内部で反発があったという。馬場は「天龍を上げるのは難しいなあ。今まで頑張ってきてくれた人間をないがしろにしてまで天龍を上げるわけにはいかん」と語っていたものだ。

 その後も交渉は継続されたが、同年秋に馬場は天龍の誠意を認めた上で「今の状況では迎え入れるのは無理」と武井に通達。天龍の全日本復帰は消えた。

 それから1年半後の日本テレビの要請にも、馬場は首を縦に振らなかった。馬場にはそうした頑固さがあるのだ。天龍が全日本に復帰したのは00年7月 ‥‥馬場が亡くなった後のことだ。

 その他、WWF(現WWE)との接近も噂された。97年暮れの最強タッグに、WWF所属のブラックジャック・ウインダム&ジャスティン・ブラッドショーのブラックジャックスが参加したからだ。馬場が還暦を迎えた1月23日の後楽園ホールにはWWFのブルース・プリチャード副社長、エグゼクティブ・マネージャーのジェラルド・ブリスコが表敬訪問し、翌日には馬場とWWF首脳2人との会談が実現した。

「参加希望者が多数出てきたので現在調整中。ドームは時間と試合数が限られているから全員を上げることはできないなあ」と嬉しい悲鳴を上げた馬場が3月11日に発表したメインイベントは、三沢光晴VS川田利明の三冠戦という全日本の鉄板カードだった。

「これが全日本のベストバウトだと思いますので、ファンも納得してくれるだろうと思います」と、馬場は自信に満ちた顔で語った。

 セミファイナルはWWFからベイダーが参加して、スタン・ハンセン&ベイダーという夢のコンビの実現で、小橋建太&ジョニー・エースのGETと激突。馬場はFMWのハヤブサ、付き人の志賀賢太郎とのトリオで、みちのくプロレスの新崎人生&ジャイアント・キマラ&泉田純と対戦。

 その他、外部からは高山善廣、垣原賢人、冬木軍の邪道&外道、バトラーツの池田大輔、新東京プロレスの奥村茂雄(現OKUMURA)、FMWで悪徳マネージャーとして活躍したビクター・キニョネスのブッキングで、ザ・ヘッドハンターズ、前述のZENの3選手が参加した。

 1カ月前の4月4日のアントニオ猪木引退試合が7万人だったのに対して、全日本の東京ドーム初進出は5万8300人。特に豪華な演出をするわけでもなく、他団体の選手の起用はファンサービスとして〝普段の全日本〟にこだわっての結果としては上々だろう。

 メインでは川田が三冠を奪取し、満身創痍の三沢は3カ月半の休養へ。この三沢の休養が全日本の流れを大きく変える─。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

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