東海地方のメディアの皆さん、愛知県は中日ドラゴンズだけじゃないことを知ってください!
こんな投稿を頻繁に目にするようになったここ数カ月。主な発信源はプロバスケットボールリーグ、Bリーグのファン。中でも激アツなのは、名古屋ダイヤモンドドルフィンズのブースター(ファン)だ。終盤戦の怒涛の連勝で、昨年の王者で優勝マジック1だった琉球ゴールデンキングスを奇跡の大逆転。西地区優勝を決めている。
Bリーグ最上位クラスのB1は東地区・中地区・西地区それぞれ8チームの計24チームで優勝を争うわけだが、5月10日から開幕したプレーオフ出場は各地区2位までとワイルドカード上位2チームの計8チーム。そして、今シーズンのプレーオフにはドルフィンズを筆頭に、シーホース三河、三遠ネオフェニックスの愛知県をホームとする3チームが見事に進出。冒頭のような叫びを誘発したのだ。
「大観衆が当たり前の野球ファンやサッカーファンには信じられないかもしれませんが、今季のBリーグの盛り上がりは尋常ではありませんでした。特にB1はどのチームの試合も連日大入り、1万円以上のシートがまたたく間に売り切れ、ファンクラブに入っていないとまともな席は入手できない状態。この盛況はもちろん、昨年8月のバスケW杯での日本代表の活躍がトリガーですが、アリーナ(会場)はまるでライブコンサートの様相で、女性ファンの集団や親子連れが目立ちましたね。客席で選手のタオルを掲げ、完全に推し活モード。目前で身長2メートル級の選手が走りまくり、試合も最後の1秒までハラハラさせますから、どハマりする人が続出したわけです。その中でも盛り上がりの急上昇を見せたのが名古屋でした」(スポーツライター)
名古屋といえば日本有数の大都市ながら「名古屋で客が呼べたら本物」と皮肉られるほど、スポーツイベントもコンサートも「客足が重い」ことで有名な土地柄。特にスポーツは中日ドラゴンズ以外には財布を開けないと昔から言われてきた。事実、2016年のBリーグ創設後も名古屋や三河は常に上位争いをしながら、千葉や宇都宮、川崎や横浜、琉球といった各ライバルチームに集客力では勝てず、空席の目立つ試合も多く、満員御礼など夢のまた夢だった。
ところが、今季は「名古屋で客が呼べたら本物」とばかりに、甘いマスクで人気のPG(ポイントガード)齋藤拓実や、SG/SF(シューティングガード/スモールフォワード)の須田侑太郎らの活躍に女性ファンが熱狂し、連日の超満員に。4月の2度の4連勝では、試合終了間際から号泣する女性ファンたちが何度もテレビカメラに抜かれた。
しかし、かつてないほど大盛況のドルフィンズに対し、地元メディアの反応が薄すぎることに不満の声が止まないのだという。
「11日、12日で難敵の三河に連勝。チーム初となるプレーオフ準決勝進出を決めた12日はドラゴンズの試合が中止だったことで、地元の中日スポーツの翌日1面はさすがにドルフィンズではないかとファンは期待したようです。ところが、13日版の1面は高橋宏斗(中日ドラゴンズ)のスライド登板決定という、ガッカリにも程がある内容。ドラゴンズ以外でここまで盛り上がったプロスポーツは名古屋で初という中で、それでもバスケはプロ野球の3段階ぐらい格下扱いということでしょう。『もっと地元のスポーツを盛り上げてほしい』『何をやったら1面を取れるの?』と失望の声がかなり聞かれました」(前出・スポーツライター)
実はドルフィンズのブースターには名古屋を愛し、同時にドラゴンズを応援している人も少なくない。どちらも勝利した日には「どるほーどらほー」の文字もSNSで躍る。スポーツで盛り上がるポジティブな状況を地元メディアが知らないわけがない。
5月18日からはファイナル進出をかけて(2戦先勝で進出)、広島ドラゴンフライズとの準決勝が地元・ドルフィンズアリーナで開催される。チケットは完売。確実に名古屋のスポーツ事情は変わった。
毎年、優勝争いとは無縁の中日ドラゴンズと心中するのもいいけれど、野球以上に「昇り龍」のバスケファンを取り込む1面作戦を実行するなら、これ以上ないタイミングだが…。
(飯野さつき)