視聴者の間で大いに物議を醸す場面が登場したのは、ドラマ「マウンテンドクター」(フジテレビ系)第3話だった。
それは冒頭のシーンでのこと。妊娠16週目の妊婦が霧ヶ峰高原・車山の頂上にある神社で安産祈願をするため、友人と登山中に突然倒れたのだ。そのままドクターヘリで搬送され、胎児への影響が心配されるも、検査の結果、貧血であることが判明。一晩入院して退院となった。
ここで噴出したのが「妊婦って登山する? びっくりなんだけど」「迷惑極まる」といった、至極当たり前の声だったのである。
車山の標高は1925メートル。その頂上にある神社には様々なご利益があるが、実際に安産祈願で訪れる人もいる。ただし、車山高原スキー場のリフトを利用すれば、山頂付近まで15分で到着。問題の妊婦がリフトを使ったかどうかはドラマには描かれていないが、トレッキングポールを両手に持つなど、本格的な登山スタイルだった。
ドラマの主演は杉野遥亮。山での医療対応を担う山岳医を描いた、オリジナル作品だ。妊婦が登山中に倒れたと聞いた救命救急のチーフ医師・小宮山(八嶋智人)は「妊婦が山登っちゃダメでしょ!」と憤慨。ただ、宮本(杉野)は「車山高原なら高度はそこまでないし、適度な運動なら健康にいいと思いますよ」と発言している。
この後、実は妊婦の母もその1年前に山で命を落としていることが明らかになる。この回想シーンに出てくるのが、山岳医の江森(大森南朋)だ。江森はこの母親の山岳事故に居合わせていたのだが、助かるはずの母親を見捨てたのではないかという、あらぬ疑いがかけられていた。
第3話はこの江森の過去をひも解くストーリーとなっており、主役の杉野は脇に回っている。ところが初回から江森の過去をたどる話が多いことから、「主役は大森なのでは」「主人公がずっとカヤの外」と揶揄されているのだ。
杉野は昨年、「どうする家康」でNHK大河ドラマに初出演し、同年7月期の「ばらかもん」(フジテレビ系)でゴールデンプライムタイムの連続ドラマ初主演を果たすなど、めざましい活躍を遂げている。
だがそんなキャリアとは裏腹に、なかなかブレイクしきれていないのが現状だ。「マウンテンドクター」はある程度の視聴率を見込める医療作品だが、世帯視聴率は6~7%をウロウロ。「どちらが主役か」論争も相まって、本格ブレイクまでは遠そうだ。
(田口寛一)