別名「人食いバクテリア感染症」と呼ばれる、恐怖の「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)」の国内感染者数が「過去最多」を更新し続けている。
国立感染症研究所の集計によれば、過去最多を記録した昨年1年間の感染者数は941人(速報値)。対して、今年1月1日から6月16日までに報告された国内感染者数は1060人(速報値)と、わずか半年で昨年1年間の総感染者数を大きく上回る、異常な勢いで増え続けているのだ。
STSSが「人食いバクテリア感染症」と称されるゆえんは、発症から数十時間以内に手足や臓器が壊死し、多臓器不全で死に至るケースが珍しくないからだ。劇症型溶血性レンサ球菌のタイプにもよるが、その致死率は30%から70%に達するとされている。
中でも国内の専門家らを震撼させているのが、海外から流入したとみられる「強毒株」の存在だ。国立感染症研究所は、海外から流入した「M1型」と呼ばれる強毒株のうち、ここ十数年、イギリスで検出されてきた「M1UK株」を特に警戒している。
「毒性の強いM1UK株が日本国内で確認されたのは、昨年でした。脱コロナで外国人旅行客が日本に大挙して押しかける事態となり、昨年から今年にかけての異常な感染者増を招いていると考えられます。訪日外国人客は今後も増え続けると予想されており、国内感染者数のさらなる急増は避けられない情勢です」(全国紙科学部記者)
劇症化のメカニズムはいまだ不明とされるが、臨床報告によれば、手足に負った小さな傷や水虫などから劇症型溶血性レンサ球菌が体内に入り込むケースが多発しているという。劇症化した場合、わずか数時間で手足の壊死が始まるケースもある。そのため手足が腫れ上がり、かつ40度近い高熱が出た時は、躊躇せず直ちに救急車を呼び、医療機関でペニシリン系抗生剤などによる治療を受ける必要がある。
人食いバクテリア感染症は、時間との勝負。すみやかな対応が生死を分けるのだ。
(石森巌)