8月7日に開幕した「第106回全国高等学校野球選手権大会」。今年は酷暑対策として、初日から3日目まで試合開始を午前と夕方以降に分ける「2部制」が導入された。
とはいえ、4日目以降はこれまで通り1日4試合を行うことから、2部制導入が最終結果に大きく反映するとは考えづらいというのが大方の意見だ。
ところで「夏の甲子園」といえば、対戦相手をくじ引きで決める抽選から戦いが始まっているといって過言ではない。開幕カードに選ばれた選手たちは歓声を上げ、相手が優勝候補ならどよめくのはいつものこと。また、初戦が2回戦スタートの後半になると、応援団のスケジュールや滞在費などで頭を悩ませる学校が出てくる。
しかし、くじ引きの時点である程度は「結果」が見えていると言ったら、力を振り絞って過酷なトーナメントに挑む選手たちに失礼だろうか。だが、実際に何日目に登場した高校が優勝に最も手が届いているのか、そのデータを見ると「縁起の良さは必要だ」と言わざるをえない。
では、延長戦が一旦15回までに短縮された2000年以降、昨年までの合計23回の大会で、はたして開催何日目に登場した高校が優勝または準優勝しているかを見てみたい(2020年はコロナ禍のため中止)。
【優勝】
6日目 8校
3日目 4校
1日目・5日目 3校
2日目・4日目 2校
7日目 1校
【準優勝】
6日目 7校
4日目 5校
5日目 4校
2日目 3校
3日目 2校
1日目・8日目 1校
(8日目は記念大会で55校が出場した08年のもの)
以上が2000年以降の優勝・準優勝校が初登場した日程だ。一目瞭然、6日目に登場した高校が15校、圧倒的な数で決勝戦まで進んでいる。その理由をアマ野球を取材する記者が分析する。
「08年(55校参加)と18年(56校参加)の記念大会は例外として、通常の49校参加の大会の場合、6日目は1回戦と2回戦が交差する日。つまり、1回戦免除で2回戦スタートの高校が最初に登場する日です。決勝まで1試合少ないことに加え、最もローテーションが楽なスケジュールと言えるでしょう」
一方で、7日目以降に登場した2回戦スタートの高校が決勝戦とほぼ無縁なのは、たった1日とはいえ、初戦までの待機期間が長すぎるからだろうか。現状、これに関しては「鬼門の日程」としか言いようがない。
話を戻すと、この6日目登場の高校が有利な傾向は、近年で特に際立ってきたようだ。
実は2014年までの15年間に限ると、優勝は1回戦スタートの高校が12校と圧倒的で、3日目、5日目あたりに登場してきた高校が強かった。逆に準優勝の10校が2回戦スタートと明暗が分かれていた。ところが、
「2015年以降は2回戦スタートの高校の優勝が多くなり、1回戦スタートの高校は最終的に力尽きるようになりました。決勝戦での大敗が多いのです。また、1回戦スタートで優勝した3校のうち2校は大阪府代表の大阪桐蔭と履正社ですから、地の利のある高校でした。つまり、他県の高校は1回戦スタートの時点で優勝の可能性がグッと低くなったとみていい。そしてなんといっても、ここ3年の優勝校、21年の智弁和歌山、22年の仙台育英、23年の慶応は、すべて6日目の2回戦スタートでした(智弁和歌山は2回戦不戦勝)。22年は準優勝の下関国際までが6日目に登場ですから、近年の尋常ではない酷暑や投手を酷使しない分業制など、高校野球のあり方が変化したことと無関係ではないはずです」(前出・アマ野球を取材する記者)
ちなみに、今年の6日目のカードは以下の4試合だ。3日目までが2部制で3試合になったことで、すべて2回戦スタートの高校となっている。
◆熊本工(熊本)-広陵(広島)
◆富山商(富山)-東海大相模(神奈川)
◆鳥取城北(鳥取)-明徳義塾(高知)
◆北陸(福井)-関東第一(東東京)
はたしてこの8校の中から決勝に進む高校、さらには優勝校が出るのか。熱戦とはまた違う、ニッチな楽しみとして注目してほしい。