8月13日、炎天下で熱戦が繰り広げられている「夏の甲子園」は大会7日目。すでに2回戦に突入しているが、パリ五輪が終了したことと、さらにお盆休みということで「高校野球でも見るか」と、開幕直後に比べ視聴者が増えているようだ。
そうした中でこの日の第2試合は、あのハンカチ王子こと早稲田実業時代に日本中を沸かせた斎藤佑樹氏と同姓同名のエースを擁する、宮城県代表の「聖和学園」が注目されていた。
一方、対戦相手となる「石橋高校」は、「初めて聞いた」「どこの県?」など、全国の視聴者にとっては聞きなれない高校名だったことは間違いない。にわかファンの間では、県大会決勝で仙台育英を退けた聖和学園の勝利を予想する人が多かった。ところが…。
試合は4回表に石橋高校がヒットや四死球で溜まったランナーを適時打で返すソツのない攻撃で一気に4点を奪い、相手先発の斎藤をKOした。
石橋はその後7回に追加点を奪い、仙台育英を破って甲子園にやって来た聖和学園を5-0で退けたのだ。
4番打者で先発の入江祥太は11奪三振の完封劇。この見事な勝ちっぷりを野球記者が称える。
「初出場とは思えない落ち着きで、とにかく守備が見事でした。実は石橋は2023年の春に21世紀枠で甲子園の土を踏んでいますが(1回戦敗退)、その後、実力で甲子園に出たいという気運が部内に高まったと聞きます。作新学院から声が掛かったという中学日本一の経験がある入江選手を中心に、投手戦でも打撃戦でも粘れるチームになっています。なんといっても栃木県大会の準決勝で優勝候補の作新学院を、決勝で同じく有力校の国学院栃木を下しての出場ですから、甲子園で勝ち上がることはまったく不思議ではありません」
実はこの勝利で、無名だった同校の「文武両道」ぶりがクローズアップされている。野球記者が続ける。
「世間というのは意地悪で、今回49校の出場が決まった途端、出場校の学力偏差値を並べるYouTube動画が作られ一部から批判を浴びました。しかし、それを見ると一目瞭然です。1位は西東京代表の早稲田実業が抜けていますが、2位が石橋なんです。生徒の半数以上が国公立大学に進学する栃木県の名門公立高校で、いわゆる『公立の星』ですね。早実は私学で受験パターンが違うということで別枠とするなら、今回の出場校の中で『一番、頭がいい』という評価まで受け、余計に驚かれているというわけです」
完封劇を見届け、世間では石橋高校を検索する人が続出。すると、そこに現れる「受験」絡みの情報を目にして、SNS上では「石橋、偏差値高ッ!」「まさかの文武両道で凄い」などの声が溢れたというわけだ。
「4日目に日本航空(山梨)を破った掛川西(静岡)も公立高校で学力偏差値が高いことで、少なからず称賛されていますが、改めて日本人は『文武両道』という言葉が好きなんですね」(前出・野球記者)
石橋の次の対戦相手は、7日目の第1試合を猛打で圧勝した青森山田だ。はたして、文武両道の公立高校がスポーツ名門校にどう立ち向かうのか。〝東北の斎藤佑樹〟との対戦以上に注目を浴びる可能性は高い。
(田村元希)