その校歌が流れた瞬間、テレビ視聴者からは「オヤッ!?」という反応が一斉に出たことだろう。
8月14日の全国高校野球大会8日目、第3試合で京都国際高校が新潟産業大付属高校に4-0で勝利し、3回戦への進出が決まった時のこと。試合後に流れた京都国際高校の校歌は、なぜか韓国語だったのだ。
「日本の高校じゃないのか」などといぶかるのはもっともだが、京都国際高校の校歌が甲子園で流れたのは、今回が初めてではない。2021年には大型スクリーンに、ハングルの歌詞と日本語訳の両方が映し出された。この時にはツイッター上で、甲子園のグローバル化に関する議論が巻き起こっている。
京都国際高校は1947年に民族教育のために設立され、2004年度から一般へ門戸が開かれた。その後、野球部が設立されると野球好きが集まるようになり、実力はメキメキと向上。2021年には春夏連続で甲子園に出場し、夏の大会では全国ベスト4まで進んだ強豪校だ。
同校のサイトには、こんな教育方針が示されている。
〈学園創設以来、韓国語教育をはじめ、英語や母国語である日本語を徹底的に学びます。座学だけでなく、国際交流を通して、「異文化理解」を深めます。韓国文化などの海外文化も学べ、全員に海外研修参加へのチャンスがあります〉
韓国の有名大学へ進学する道もあり、ネイティブ教員による韓国語の授業が行われているという。
近年はZ世代を中心にK-POPや韓国ドラマが人気が高まっており、甲子園で韓国語の校歌が流れることについて、ことさら違和感はなくなりつつある。
その一方で京都国際高校は、野球部部長の方針で「笑顔禁止」を定めており、ナインが大げさに喜ぶような姿は見られない。最近はプロ野球さながらの大げさなパフォーマンスで、審判員から注意を受ける生徒が少なくない。浮き足だったところを見せないのは、実は高校球児として本来あるべき姿なのかもしれない。
校歌にはポップなメロディーやレゲエ、フォーク、軍歌など様々な曲調があり、多様性は深まっている。近い将来、韓国語だけでなく、多言語の校歌が流れるのが普通になっていくのかもしれない。
(ケン高田)