飲んでいたお茶を、危うく吹き出しそうになった。8月25日の「笑点」(日本テレビ系)のことだ。日曜夕方は「笑点」を見るのが我が家のお決まりで、この日もいつものようにテレビの前に鎮座していたら番組冒頭、いつものように司会の春風亭昇太が客席からご挨拶。そして演芸コーナーのゲストを紹介するのだが…。
「司会の春風亭昇太です。さ、今日の演芸なんですが、なんと! 柳沢慎吾さんです」
およそ演芸コーナーには似つかわしくない名前が出て、観客からは「おー」っというどよめきが。そりゃそうだ。これまで何十年と「笑点」を見続けてきたが、演芸コーナーに俳優(柳沢慎吾だけど)が出てくるなんて、前代未聞のこと。「笑点」ついに血迷ったか、と思った。
ところが、だ。柳沢が「どうもみなさん、こんにちは~」と挨拶すると、客席からは大きな笑いと拍手が巻き起こった。
「いやー、たくさん。嬉しい。これからスタートしますが、昨日ですか。実家の方に電話しまして、『笑点』に出さしてもらうんだよって言ったら、うちのおかあちゃんが喜んでて『お前、笑点に出て何やるんだい?』って。『高校野球をやりたいなあって思ってる』って言ったら『いいか、短めにしろ』って」
そう客席に語りかけて、またもや爆笑。つかみはバッチリだ。
その流れで架空の「甲子園準々決勝 横浜高校×PL学園」(このチョイスも最高)の試合をひとりで再現する、お得意の芸を披露。ピッチャー、キャッチャー、バッター、監督はもちろん、審判、実況アナウンサー、解説者、各チームの応援席のチアリーダー、さらには「かちわりいかが、かちわりいかが」という甲子園名物「かちわり氷」の販売員まで大熱演だ。
効果音から応援団の演奏、何から何まで全てひとり。横浜が勝って校歌を歌うところは、カメラが球児たちをひとりひとり映しながらパーンしていく場面まで再現。柳沢が歌う校歌に合わせ、客席は大きな手拍子で盛り上がること盛り上がること。普段、若手の漫才コンビがネタをやっても重い空気で気の毒になることが多いが、この日の「甲子園」は沸きに沸いた。
「いやー、お客さんいい。優しい。最高です」
観客に感謝を述べて、最後はやはり、
「いい夢みろよ! あばよ!」
と持ちギャグ(!?)で締めた。
これを芸と言わずして、何を芸と言うか。凄いぞ、柳沢慎吾。彼には「警視庁24時」という鉄板ネタもある。またの登場を期待したい。というか「R-1」に出れば優勝間違いなしではないのか。これはピン芸人もうかうかしてられないぞ。
(堀江南)