既に告示された自民党総裁選(9月27日投開票)をめぐっては、各種世論調査で石破茂元幹事長が上位につけている。2020年以来5回目の登板であり、2021年の総裁選では出馬断念に追い込まれた。なぜ「終わったはずの男」が再浮上しているのか。
石破氏は9月10日の政策発表会見で、次のように意気込みを語っている。
「自分の38年の政治生活の集大成と位置づけ、最後の戦いとして全身全霊をもって挑んでまいります」
3年前に出馬を断念した際には「ひと区切りをつけたつもり」と言っていた。ロシアによるウクライナ侵略など日本を取り巻く安全保障環境が激変したことを受けて、防衛相などを歴任し、安全保障のプロを自任する石破氏として「自分がやらなければ、今やらなければ、という強い思い」がこみあげ、出馬することにしたという。
石破氏の強みは知名度の高さだ。最近は「党内野党」暮らしが長かったため、地方行脚をする時間的余裕があり、各地から応援要請を受ければこまめに遊説を繰り返していた。地方の党員からしてみれば、国会議員とはなかなか接する機会がない中で、石破氏は親しみを持てる候補ということになる。これまで4回も挑戦しているため、「最後ぐらいは勝たせてやってもいいのではないか」との同情が寄せられているという。
ただし、国会議員の間では「後ろから鉄砲玉を撃つ男」という悪評がはびこっている。石破氏は麻生政権の2009年に麻生太郎氏に退陣を迫った経緯があり、
「麻生副総裁はいまだに石破氏を許していない」(自民党幹部)
とされる。
石破氏は9月2日にBS日テレの番組に出演した際、決選投票に残った場合、党内で唯一派閥として残っている麻生派を率いる麻生氏に支援要請するか問われて「そういうこともあるかもしれない」と答えた。ただ、支援を得られるかは「わからない」と述べるにとどまった。
仮に決選投票に残れたとしても、石破氏にとって当選までのハードルはなお高いようだ。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)