スプリンターズSが終わり、東の舞台は中山から東京へ、西は中京から京都に移り、東西共に本格的な秋競馬が始まる。
同時に、来週からは怒濤のGⅠ戦線がスタートを切るため、ファン待望の本格的な競馬シーズンの到来である。その開幕週を飾るのは、東が毎日王冠、西は京都大賞典だ。
共に1着馬に天皇賞・秋の優先出走権が与えられる盾の前哨戦である。
毎日王冠は、なかなかの顔ぶれがそろった。生きのいい3歳馬は、スプリングSを快勝し、ダービー9着(3番人気)のシックスペンス、ラジオNIKKEI賞勝ちのオフトレイル、プリンシパルSを制したダノンエアズロックの3頭。
迎え撃つ古馬勢も豪華で、函館記念を快勝したホウオウビスケッツ、新潟大賞典勝ち以来、5カ月ぶりになるヤマニンサルバム、大阪杯僅差2着のローシャムパークなど、これまた錚々たるメンバーだ。
まさにファン必見の前哨戦と言っていいが、馬券的には難解である。まずは過去のデータをひもといてみよう。
02年に馬単が導入されて以降、これまでの22年間、その馬単での万馬券は6回(馬連3回)。この間、1番人気馬は10勝(2着3回)、2番人気馬は2勝(2着4回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は4回。つまり、波乱の結末を迎えることもあるが、比較的順当に収まるケースが多い重賞と言えるだろう。別定戦でもあり、まずは本番の出走権を何としても─とみられる馬に注意を払うべきだろうか。
年齢的には他の重賞同様、4、5歳馬が最も連対を果たしているが、3歳馬の頑張りは見逃せない。春のGⅠ戦線で上位争いを演じた馬が多く、斤量の恩恵があることを思えば、力をつけてきた秋、古馬と互角に渡り合っても不思議はないわけだ。
3歳馬か古馬か、難解で悩むところだが、3歳馬のダノンエアズロックに期待を寄せてみたい。
地力では多少見劣るが、斤量差があり、ひと夏を越して成長も見られる。ここでも好勝負に持ち込めると判断しての狙いだ。
14着に敗れたダービー以来になるが、その後は放牧でリフレッシュ。しっかりと英気を養い、ここに向けて調整されてきており、臨戦態勢は整っている。
ダービーの敗因は、距離に尽きる。父モーリスは周知の通りマイラーだし、母の父ファストネットロックはスプリンター。血統的に2400メートルの距離は長かったとみるべきで、実績のある1800メートル戦で改めて注目すべきなのだ。
勝ち鞍の3勝はすべて東京コースで、新馬─特別を連勝した時と同じ舞台での競馬。1週前の追い切りもよく、良馬場条件に大きく狙ってみたい。
一方の京都大賞典は、宝塚記念勝ち以来3カ月半ぶりになるブローザホーンが出走してくる。この主役を巡って、どんな競馬が展開されるのかだが、狙って面白いのは、ケイアイサンデラだ。
ハナを奪わないと勝ち負けに持ち込めなかった馬が、前走は3番手で折り合い、ハナ差ながら3勝クラスを勝ち上がってみせた。ブリンカーを外して気持ちを入れさせなかったのが奏功。ここにきて精神面での成長が見られたわけだ。
この中間はさらに上昇気配。稽古の動きも素軽くなっている。
母の父、祖母の父は共にGⅠベルモントS(12ハロン)の勝ち馬で、もとより長めの距離は得意。バビットの出方次第だが、前走の競馬ができればハナにこだわらなくてもいい。昇級初戦で相手は強くなるが〝一発〟があっても不思議はない。