2018年に全米で公開され、「ジョーズ」を超える大迫力で観客の度肝を抜いた映画「MEG ザ・モンスター」。200万年前に絶滅したはずの巨大なサメ「メガロドン」に襲われた潜水艦を助けようとするレスキューダイバーを描いたものだ。
実はこのメガロドンをも餌にしていた、とんでもない海の怪物が存在するという。それがクジラ類の祖先で、神話の世界では「地獄の海軍提督」の異名を持つ「リヴィアタン」という肉食クジラだ。
クジラの歴史は先史時代に遡るが、クジラ類にはもうひとつ、漸新世に登場したといわれるグループ「ハクジラ類」があり、中新世時代にはこのハクジラこそが「海中の頂点捕食者(トッププレデター)」とされた。その中でも最も大型で獰猛だったのが、リヴィアタンという化け物クジラだというのだ。科学ジャーナリストの話を聞こう。
「2008年にペルーの首都リマから南西35キロほどにある累層の堆積物から発見された、歯や下顎が付いた頭骨の化石から推定すると、リヴィアタンの全長は15メートルから20メートルほどで、体重は50トンを超えるものが少なくありませんでした。口にはマッコウクジラには見られない上顎の歯が並んでおり、最大30センチ。厚みがあり、顎が相当に丈夫であることから、このクジラは肉食性で、極めて獰猛だったことがうかがい知れます」
リヴィアタンはマッコウクジラの近縁とされるが、むろん化石だけではこの怪物クジラがいつからいつまで海を支配していたのか、正確にはわからない。ただ、活動時期が1200万年前から1300万年前の中新世中期であることを考えると、メガロドンが生息していた時代と間違いなく重なるはず。リヴィアタンが、メガロドンが獲物として狙っていたアザラシやイルカを捕食していたと考えられることから、2種類の化け物同士、お互いを標的に、食い合っていた可能性も否定できない。
現代のクジラには獰猛なイメージはなく、大海原を悠々と泳ぐ姿しか想像できないが、かつては同じ餌を狙ってクジラがサメを食い殺す、という壮絶なシーンが繰り広げられていたのかもしれない。そんなリヴィアタンの化石は今も、リマの博物館で保存されているそうだ。
(ジョン・ドゥ)