「2018年ドラフト1位トリオ」の明暗がまさかここまでハッキリ分かれるとは、野球ファンは想像していなかったに違いない。
この年のドラフト会議は、プロ野球関係者の間で「豊作」と言われ、中でも大阪桐蔭の根尾昂と藤原恭大、さらに報徳学園の小園海斗の3人は「高校ビッグ3」と別格扱いだった。
根尾と小園は4球団、藤原は3球団が競合し、根尾は中日、小園は広島、藤原はロッテが交渉権を獲得。それぞれがプロの世界へと羽ばたいていった。
ところがここから、3人の道はそれぞれに異なっていく。これまでのプロ通算成績を見てみると、圧倒的なのは小園だ。打率2割7分4厘、24本塁打、181打点、OPS.674の成績でしっかりと存在感を示し、開催中の「プレミア12」侍ジャパンに選出されている。その成長ぶりは大したものである。
ロッテで外野を守る藤原は打率2割4分2厘、14本塁打、81打点、OPS.643をマーク。今季は規定打席未到達ながら自己最多の2割9分を記録し、来季はレギュラーでの活躍が期待されている。
その一方で、ファンの期待をすっかり裏切っているのは根尾だ。根尾は2018年11月、中日と仮契約を結んだ際に「ポジションはショート一本でいかせてください、とお伝えしました」と説明。しかし2022年6月に立浪和義監督と話し合い、2022年以降は投手に専念すると決めた。
最初の年は25試合に登板し、29回を投げて防御率3.41だったものの、2023年以降は登板数が激減。今季はわずか3登板で防御率9.39と散々だった。プロ初勝利はいまだ、お預けとなっている。
中日ファンからは、投手転向を勧めた立浪氏への恨み節が飛び出しており、「ゴールデンルーキーが見る影もない」「いっそ他のチームでやり直してほしい」などと、現役ドラフトでの移籍を望む声が高まっている。
根尾は11月21日、選手寮「昇竜館」で契約更改交渉に臨み、今季年俸1600万円から350万円減の1250万円でサイン。「ふがいないのひと言」と悔しさをにじませた。
奇しくもこの日、かつてのライバルの小園は「プレミア12」アメリカ戦で5回に決勝三塁打、7回と8回には3ランと2ランの2打席連発で計7打点を挙げる大暴れ。侍ジャパン国際大会25連勝の立役者となった。今後、交渉の場につく契約更改では、今季5400万円から大幅アップが予想されている。
小園の活躍を目の当たりにして、根尾の来季への意気込みはよりいっそう強くなっているに違いない。
(ケン高田)