望めば何でもかなえてしまう武豊騎手にとっても、国内のGⅠコンプリートは未踏の高峰。その最後の壁として、長く立ちはだかっていたのが朝日杯フューチュリティステークスだった。
これをついに破ったのが21年のドウデュースだが、その時には新たにホープフルS(前身はラジオNIKKEI杯2歳S)が17年から新GⅠに昇格済みになっていたという皮肉。ゴールを動かされた形で豪華コレクションのコンプリートは先延ばしになっているが、これさえも数年のうちにやってしまうのだろうという空気。55歳であの若さなのだから、ブレーキなんかかけられるはずがない、と仲間たちにそう思わせてしまっているのがすごさだ。
リーディング争いの上位常連で、今年は首位も濃厚と言われている須貝尚介調教師は、これまで格別に武豊騎手を重用してきたイメージはなかったのだが、ここへきてレジェンドの力を見直したようにすり寄ってきている。
2歳のエース格アルテヴェローチェには、目をかけてきた佐々木の不用意な騎乗停止という理由があるにせよ、中堅たちをまとめて飛び越えて武豊の起用。このままクラシックまで突っ走っても不思議のない素材で、武も熱心に稽古に乗っている。かなりの好メンバーがそろっているが、この流れは本命に期待したくなる。ドウデュースが現役を去るタイミングで、武に新たなスター候補が舞い降りたと考えたい。
今年産駒がデビューした新種牡馬では、ナダルの大活躍が話題を呼んだが、産駒が活躍する傾向はダートに偏向気味で、ここには登録馬がいない。
変わって大舞台に歩を進めてきたのはタワーオブロンドン産駒。距離に限界はありそうだが、2歳戦のマイルなら問題なくこなすだろう。その名はパンジャタワー。中京の芝1200メートルの新馬を勝ち、東京芝1400㍍の京王杯2歳Sを連勝してきた。クラシック向きとは思わないが、現時点での完成度は高そうだ。
ニタモノドウシは、ディーマジェスティ産駒の2戦2勝馬。菅原明と川田で2勝を挙げて、ここは世界のムーア。血の力はもの足りないのかもしれないが、最後の鬼追いで馬券圏内に来るかも。
トータルクラリティは、6月の京都で勝ち上がったバゴ産駒。新潟2歳Sの勝ち馬は評価が薄くなりがちだが、バゴは時折、大物が出る傾向があり、それがこの馬かも。
ミュージアムマイルは、何よりも鞍上クリスチャンが怖い。他では、距離はギリギリでもエイシンワンドを押さえるかどうか。