かつて甲子園球場には「ラッキーゾーン」があった。阪神・佐藤輝明はこのほど、契約更改の場で球団に対し、このラッキーゾーンの再設置を直訴している。佐藤は23日、契約交渉の席で「真面目につけてほしい」と訴えたが、嶌村聡球団本部長は「今が甲子園のあるべき姿かなと思っている」として、その場で却下した。
左の大砲として期待されている佐藤はプロ入り後、20本以上の本塁打を放っているが、今季は16本にとどまった。甲子園では右翼から左翼にかけて吹く浜風によって打球が押し戻されるケースが多く、左打者には大きく影響する。ここにラッキーゾーンが設置されれば、佐藤は「50本いく」と自信満々だ。
今季の阪神は、森下翔太と佐藤がチームトップとなる16本塁打、大山悠輔が14本で続いている。本塁打が出やすい神宮球場を本拠地とするヤクルトの103本に比べ、阪神はわずか67本塁打。嘆き節も飛び出すというものだ。
では「自費でもつけさせてもらえるなら」とする佐藤の要求は、ファンにとってもうなずけるものかといえば、さにあらず。「その前に守備をどうにかせんかい」がまず出てくるのだ。
佐藤の今季の成績は打率2割6分8厘、16本塁打、79打点。なんとも足りない数字だが、大きな問題は両リーグ最多となる23失策だ。とりわけ送球ミスが目立っており、チームは何度このエラーで危機に陥ったことか。契約交渉の席では、ポスティングシステムを利用してのメジャー挑戦の意志を伝えた佐藤だが、ラッキーゾーンによる目先の本塁打増よりも、せめて守備力を普通レベルにしないと、メジャーでは出場機会すらないだろう。
12月21日に西宮市内で行われた、佐藤輝明後援会主催の野球教室では、野球少年から「守備がうまくなるにはどうしたらいいですか」「悪送球してしまいます。送球はどんな気持ちでやっていますか」との質問が相次ぎ、微妙に顔をしかめた佐藤。なんの忖度もない子供らしい質問と言えるが、ファンが求めているのは、まさに守備力の向上だろう。
(ケン高田)