その国によって生活習慣や文化が異なるように、世界各国の刑務所事情もまた、様々だ。ただ、周りを塀に囲まれていることに違いはないため、収監されている受刑者は、外部との接触を絶たれることになる。ところが中南米などの刑務所では、所内で堂々と麻薬の取り引きが行われ、当局はあの手この手を使い、対応に苦慮している。
刑務所内の受刑者にとって必須となるのは、携帯電話だ。彼らは携帯電話を使って塀の中から外部へ犯罪を指図したり、目撃者を脅したり、時には電話やメールで詐欺に着手。まさに携帯電話は受刑者の必須アイテムなのだ。
中央アメリカ南部の国、コスタリカの司法省はかつて、ラ・リフォーマ刑務所に入り込もうとした猫を「現行犯逮捕」する動画を公開したことがある。司法省によれば、この猫は胸や首に奇妙な包みを結び付けられており、猫から包みを奪い取って中身をあらためたところ、なんと中古の携帯電話と充電器、交換用電池、イヤホンが出てきたという。
コスタリカでは近年、犯罪組織が刑務所内に携帯電話を運び入れるために猫を訓練させ、「運び屋」として使う事件が頻発。訓練された猫が看守に捕まるのは、これが二度目だった。犬と違い、猫を手なずけて訓練するのは相当に手間暇がかかるが、受刑者にとっては面会者に持ち込ませるよりバレにくく、看守を買収するよりも安上がり。そのため、犯罪組織では「猫の運び屋育成」が横行しているというのだ。
コスタリカにある別の刑務所では、かつてコカインとマリファナそれぞれ14グラムを所内に運びこもうとした「ハトの運び屋」が捕えられたことがあった。伝書バトならぬ「麻薬バト」として成功率は高いものの、一度に多くは運び込めないため、需要は猫へと移行しつつある。
2020年8月にはスリランカの刑務所で、猫の「麻薬運び屋」が刑務所で捕獲されるものの、「脱獄」する事件が発生。大きなニュースになっている。
現地メディア「アルナ」の報道によれば、この猫はウェリカダ刑務所で首にヘロイン約2グラム、SIMカード2枚、メモリーチップ1枚入りの小さなポリ袋が結び付けられている姿で見つかった。署員によって取り押さえられ、「拘束」されたものの、なんと監房から脱走したというのである。
その後、この猫が捕獲されたかどうかは不明だが、市民の間では「捕まったら猫に前科はつくのか」「懲役何年になるのか」「実刑か執行猶予か」等々、様々な論議が飛び交ったそうだ。
(灯倫太郎)