過去5回も自民党総裁選に出馬した石破茂総理。総理大臣になったら何をしたかったのだろう。夫婦別姓の実現か、いや、日本人ジェノサイドか。
そんな激しい言葉を使ったのは、石破内閣と厚生労働省がフジテレビ騒動に隠れて「年金制度と健康保険制度」の改悪を目論んでいるからだ。
まず1月29日付の本サイトで取り上げた通り、サラリーマンが納めてきた「厚生年金の財源」が取り崩される。厚労省は同日、自民党の社会保障制度調査会に「将来の基礎年金(国民年金)の底上げ案」を提出した。
これは社員と勤務先が半分ずつ納めてきた厚生年金財源を、国民年金基金に流用。国民年金加入者の年金支給額を増額する代わりに、厚生年金を納めてたサラリーマンの年金支給額を減額するというものだ。
続けて石破内閣は、医療費が高額になった時の救済制度「高額療養費助成制度」の自己負担額の引き上げを決めた。この結果、生活保護受給者は引き続き自己負担なし、非課税世帯は月900円増の3万6000円、年収370万円以下のワーキングプア世帯は月3000円増の6万円、世帯年収平均以下の370万円世帯は9000円増の約9万円、年収770万円世帯は2万円増の約19万円、年収1160万円以上の世帯は4万円増で、自己負担額は30万円の大台に乗る。
健康保険料を多く支払っている人ほど医療費を多く搾り取られ、払えないなら治療は認めない、というのだ。この自己負担額引き上げに、ガン患者会や難病患者会から「経済的な事情で治療が続けられなくなり、命にかかわる」と切実な声が上がっている。
例えば両親と同居する10代、20代にガンが見つかるとその後、民間の医療介護保険やガン保険には加入できず、ひたすら月30万円の医療費を自己負担しなくてはならない。主治医からは5年生存率は何パーセント、再発率は何パーセント…という残酷な数字を突きつけられ、再発すればまた高額な治療費がかかる。
「抗ガン剤も使えず、このまま死ぬのか」
若いガン患者ほど、将来に絶望するという。ガンや難病だけではない。アトピー性皮膚炎の治療薬「デュピクセント」をサラリーマンが使う場合、1カ月あたり約4万円(薬価は2回目以降、5万8775円~6万1714円)かかる。あまりに高くて処方を諦めたサラリーマンは、寒風が肌を刺すような激痛に耐えて通勤するが、非課税世帯の老人は、同じ薬を1本8000円で手に入れられる。
新年に「楽しい政治を目指す」と言った石破総理は難病患者会、ガン患者会からの要望に対し、「引き上げ議論は十分に尽くした」とゼロ回答。「方針は変更しない」と強弁した。
自公政権と厚労省は今年8月から段階的に、高額療養費の自己負担額を増やす予定だ。その前に参議院選挙でガン患者と難病患者の「命を守る投票」をするしかない。
(那須優子/医療ジャーナリスト)