20日の就任早々、25本にも及ぶ大統領令を乱発したトランプ大統領。その中にはいまだに多くの謎を残し、数多くの陰謀論が渦巻く「ケネディ暗殺事件」の機密文書の全文開示が含まれていた。61年の時を経て、アメリカ史上最大のタブーが今、解き放たれるのか。
1963年11月22日、時の大統領・ジョン・F・ケネディがテキサス州ダラスをパレード中に射殺された事件は、アメリカのみならず世界中に大きな衝撃を与えた。事件を受けて設置された調査委員会=ウォーレン委員会は、元海兵隊員・リー・ハーヴェイ・オズワルドの「単独犯行」と結論づけた。しかし、当初から委員会の結論に対する疑義は蔓延していた。そして事件の機密文書は、関係者へのプライバシー配慮などから2039年まで非公開とされたのだ。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が解説する。
「事件後、〝真相解明〟を求める世論の高まりなどから、歴代の政権は公開できる範囲で機密文書を開示しています。実際、17年にはトランプ大統領の指示によって、CIAなどの情報機関からストップを要請された情報以外は公開されたし、そのあとのバイデン政権も一部文書の公開に踏み切っています」
山田氏が言うように、関連する機密文書のうち2891件はすでに公開済みで、残りの文書は全体の約3%。一部報道では1%という話も出ているくらいだ。要するにこの数%に何か核心的な機密が隠されていたのか否か? そこが注目されているのである。
トランプ大統領は今回の大統領令に署名する際、「(残りの文書は)大きな一件だ。多くの人々が何十年もこれ(開示)を待っている」と自信ありげに述べた。また今回の大統領令では、やはり米国で注目度の高い2件の暗殺事件、ケネディ大統領の弟・ロバート・ケネディ元司法長官とマーチン・ルーサー・キング牧師の機密文書公開も指示している。
人々の関心が高い、特にケネディ大統領暗殺事件については、前回の政権担当時も開示を命じるなど強い執着を見せているトランプ大統領だが、その理由はどこにあるのだろうか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏はこう話す。
「もちろん、真相解明のために全文書を公開するという気持ちはあるのでしょう。しかし、トランプ大統領のこれまでの言動などからして、自分が開示することで、今までの大統領にはできなかったことを俺は成し遂げた、というアピールが大きいように思えますね。要するに、力がある大統領なのだということを国民に見せつけたい」
山田氏も同様の見方だ。
「今回の大統領令は、政府の官僚たちへの反感や疑義を抱く層‥‥つまりトランプ大統領の支持層には特に強く届くと思います」
トランプ大統領の力、あるいは威勢とでも言えばいいのか。多分に政治的には聞こえるが、それでも残された文書を見たいというのは多くの人のホンネであることは間違いないだろう。