残り数%の文書にいったい何が記されているのか。そこにすべて集約された感もあるが、ここでケネディ大統領暗殺に関して人々が抱いてきた疑念とその経緯を一度整理してみよう。
現時点での「公式」な結論としては前述したオズワルドの単独犯行ということになる。しかし、そこへの疑義は事件当時から噴出していた。まず単独犯・オズワルドが事件の2日後、ダラス警察での移動中、ナイトクラブ経営者・ジャック・ルビーに射殺されてしまったことだ。
大統領暗殺犯が事件直後に暗殺される‥‥これほどセンセーショナルかつ疑念が沸く出来事はないだろう。しかも、その後の調べでルビーはマフィア関係者などとの黒い交遊があり、疑念はいっそう色濃くなっていく。ダメ押しに、ルビー自身が事件の4年後、55歳の若さで「病死」してしまう。オズワルド単独犯説を否定したい、陰謀論者たちがその念を強くしたのは当然であろう。
「ウォーレン委員会の結論に納得いかない人たちの中には、ケネディ大統領暗殺の背後にイタリア系マフィアがいたと考える人たちもいて、それが〝真犯人=マフィア説〟を作り出しているのです」(山田氏)
しかし、マフィア説を裏付けする材料はなく、山田氏が言うように、一説にすぎない。ただ、ケネディ大統領就任後、マフィアへの締めつけ・取締りが格段にきつくなったのは事実で、マフィア側が恨み骨髄になったとしてもおかしくはあるまい。この黒幕として、イタリア系マフィアの大物だったサム・ジアンカーナの名が挙がったことも、このマフィア説にある種の説得力を加えた。
いまひとつ、暗殺事件とのつながりにおいて、意外な大物の名前も挙がった。
「マリリン・モンローの死(暗殺前年に死去)と事件を結びつける向きも一部にありました。その人たちによれば、ケネディはもちろん、後に暗殺された弟ロバートもモンローと関係が深かった。何か関連性があるのでは? ということになったのでしょうか」(山田氏)
確かにモンローとケネディが親密な関係にあったことはゴシップ的に語られていたし、モンローの死にまつわる薬物関連の疑いも出てはいる。薬物→マフィア→そこに大統領と大物女優のスキャンダルとくれば、陰謀論者でなくても、キナ臭さを感じずにはいられないのも不思議ではないのだが‥‥。