1月末に上毛電鉄の存続を決めた「群馬県中小私鉄3社沿線地域交通リ・デザイン推進協議会」が、群馬県と栃木県を結ぶ「わたらせ渓谷鐵道」も存続させる方針を確定させた。
わたらせ渓谷鐵道は毎年のように赤字を計上し、2023年度の赤字は約3億5000万円。バスへの転換も議論されたが、これまでどおり第三セクター方式のまま、全線で運行される。
先に存続が決まった上毛電鉄は協議会が行ったアンケートで、存続のための運賃値上げに約6割が賛同し、負担金の支払いにも約3割が賛成。輸送量が多く、バスに転換するとよりコストがかかることも、運行続行の理由となった。
一方でわたらせ渓谷鐵道は、存続のための運賃値上げには約7割が賛同したものの、バスに転換したほうがコスト的に有利であるという報告が上がっていた。それだけにバス転換の可能性は高かったが、「トロッコ列車」が存続を後押しした。
わたらせ渓谷鐵道は、窓ガラスがないオープンタイプの車両を使った観光列車「トロッコわっしー号」と、「トロッコ渓谷号」(写真)を、週末を中心に運行。満席になることも珍しくない人気ぶりで、トロッコ列車の経済波及効果が約2億円あるという。
わたらせ渓谷鐵道のためにも、トロッコ列車に乗ってほしいと、鉄道ライターは訴える。
「わたらせ渓谷鐵道はその名前のとおり、渡良瀬川に沿って走る路線で、車窓からは渓谷美を楽しむことができます。窓のないトロッコ列車であれば、渡良瀬川の清らかな空気を胸いっぱいに味わえます。春は桜、その後は新緑、秋には紅葉と、1年を通じて表情を変えるので、何度でも乗りたくなる列車ですね。2014年には天皇皇后両陛下が乗って、新緑を眺められたこともあります」
同協議会は2月12日に上信電鉄の方針についても決定する予定だ。どんな結果が出るのだろうか。
(海野久泰)