「年収103万円の壁」引き上げの行方は不透明だが、確実なのは年収106万円を超えて社会保険支払い義務が生じるパート・アルバイト従業員やフリーランスには、地獄の取り立てが待っていることだ。中居正広氏の示談金トラブルやフジテレビの性上納疑惑に国民の関心が集まる陰で、厚生労働省は極悪非道なヤミ金業者へと変貌していた。
令和7年度から、国民健康保険料の滞納者になんと、法定金利ギリギリの14.6%の高金利を課すという。これは現在、問題になっている高額療養費の自己負担引き上げとのダブル打撃になる。
ガンや心筋梗塞、脳卒中などを患い、休職もしくは失業を余儀なくされた64歳以下の患者、前年の世帯年収が平均以下の世帯でも、月額18万円の治療費負担が課される。このほか、法定金利ギリギリの14.6%という高金利の健康保険料支払いまでのしかかる。
もはや現役世代が大病をしたら偽装離婚、患者は治療を諦めて死亡、子供は退学、自宅は売却の一家離散か、将来を悲嘆して一家心中でも考えるしかないのか。
一方で生活保護受給者や低所得老人、3カ月以上国内に滞在する外国人観光客、出稼ぎ外国人、外国人留学生は高額療養費制度を活用し、タダで高額医療を受け続けられるという。これがガン患者会や難病患者会が、生死を懸けた面会申し入れを断り続けている石破茂内閣と自民党の言う「楽しい日本」「外国人は日本の宝」らしい。
令和7年度から滞納金の金利が大幅に上がる対象となるのは、平成22年1月1日から令和7年12月31日までの国民健康保険料。東京都板橋区の公式サイトを参考にすると、滞納年数に応じて段階的に金利2.3%から、利息制限法で定められている法定金利15%ギリギリの14.6%まで引き上げられる。
貸金業者は債務者の申込があって金を貸し付けているのに対し、国民健康保険は国民の意思を無視した強制加入。国民は保険料支払い先である区市町村と「法定金利15%ギリギリのぼったくり高金利の保険に加入する」同意書や契約書を交わした覚えはない。健康保険制度はもはや、保険のテイをなしていない。
さすがに財務省も、健康保険制度改革に乗り出した。昨年11月13日、財政制度等審議会財政制度分科会で「薬局で自ら購入できる医薬品の選択肢を増やしていく必要がある」と風邪薬や湿布薬、アレルギー性鼻炎薬など、薬局で買える薬は健康保険適応にする方針を明記。これに対し、開業医らの既得権益団体たる日本医師会の松本吉郎会長は、
「国民皆保険制度の理念を形骸化させるものであり、容認する余地など微塵もない」
と猛反発している。フジ・メディアHDの日枝久相談役も大概だが、テレビの向こう側の日枝氏に憎悪を向けたところで、我々の生活は楽にならない。本当の巨悪は、もっと身近なところに潜んでいる。
(那須優子/医療ジャーナリスト)