「バナナのたたき売り」は映画「男はつらいよ」で、渥美清演じる寅さんが佐賀の名人からたたき売りを習うシーンが評判を呼んで有名になったが、石破茂政権は軽妙な口上もなく、ひたすら日本維新の会に媚びている。
自民、公明両党は維新が求める高校授業料の無償化に向けて、来年度予算案を修正しようしている。
これに異論を唱えたのが、自民党文教族の萩生田光一元政調会長で、同調したのは維新に今なお影響力を持つ橋下徹元大阪府知事だった。
萩生田氏は党本部で開かれた2月18日の文教関係の部会後、記者団にこうブチまけた。
「中身を議論しないまま野党の言いなりに押し倒されて、予算成立を急いだことになれば、将来に遺恨を残す」
この批判とともに、野党の要求に応じて支援額がどんどんつり上がっていることについても、
「サービス合戦でバナナのたたき売りだ」
と皮肉ったのである。部会でも「予算成立の条件に教育政策が使われることが本当にいいのか」と、維新との合意を急ぐ政府・与党内の動きを疑問視したという。
これに呼応した橋下氏が、自身のXで援護射撃。
〈所得制限(支援金)を単純に撤廃すれば、(準)高所得者層が支援金で余剰が出た分を他の教育費に回す。このことで学校外教育費(塾代)が高騰する可能性があるが、学校外教育費の高騰が、若者が子供を産むことを諦めた理由の一つというのが韓国の通説だ。だから大阪市では全国初の学校外教育費の助成を『所得制限付き』で始めたが、今はこの助成も所得制限が撤廃された。今回の維新国会議員団で本当に教育格差の是正が実現できるのだろうか。今のところ単純なバナナのたたき売りにしか見えない〉
萩生田氏と橋下氏は安倍晋三元総理を通じて松井一郎前大坂市長を交え、交流を持っていただけに、維新との妥協に突き進む石破総理にとっては気になる反対論といえる。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)