JRAでは9人の新調教師が3月5日に、東西のトレセンで厩舎を開業した。その中には元GⅠジョッキーの田中勝春や秋山真一郎もいるが、注目すべきはなんと言っても、JRA初の女性調教師の始動だろう。
前川恭子調教師は2023年12月に、新規調教師試験に合格。昨年から技術調教師として「世界の矢作芳人調教師」の下で研鑚を積んできた。試験に合格直後、さほど面識のない矢作師のもとへ突撃。「学ばせてください」と頭を下げてお願いしたところ、快く受け入れてくれたそうだ。昨年2月にはサウジアラビア遠征にも帯同した。彼女の良さを、矢作師はこう語る。
「頭がいいのはもちろん、いろんなことによく気付く。たくさん研修にきたけど、その中でも一番と言っていいくらい優秀。いい厩舎を作ると思う」
もちろん、矢作師から学んだことは多い。それについて前川師は、
「テンポよく競馬を使えるように仕上げていって、結果も出している。そのノウハウは凄いなと思っています。自分も出走数にこだわった上で、それぞれの馬に合ったレース選択をしていくつもり。スタッフとコミュニケーションを密に取りながら、人も馬もみんながハッピーになれる厩舎を作っていきたい」
幸い、いい馬が入ってきている。引退解散となった音無厩舎から重賞3勝馬モズメイメイ(牝5)が、村山厩舎からは2023年北海道スプリントC(JpnⅢ)を制したケイアイドリー(牡8)が移籍している。
初陣は日曜の阪神7R・4歳以上1勝クラス(芝2000メートル)に出走するテクネチウム(牡4)だ。平地未勝利馬だが、5走前から障害を走り、2走前に初勝利を挙げている。騎乗するのは永島まなみ。減量を生かしたいことに加え、追えることから彼女にしたそうだ。「女性タッグ」で挑むところが心憎い。
田中師と秋山師のことにも触れておこう。
田中師の初陣は、土曜の中山12R・4歳以上1勝クラス(芝1600メートル)のデイジー(牝4)。前走は最下位に終わったが、出遅れて砂を被り、レースにならなかった。芝では1勝、2着1回、4着1回と掲示板を外していない。マークしておくべきだ。
秋山師の初陣は、3月15日の阪神11R・コーラルS(リステッド、ダート1400メートル)のテイエムリステット(牡4)だ。全4勝をダート1400メートルで挙げているだけに、楽しみだ。騎乗者は武豊になる予定である。
(兜志郎/競馬ライター)