フォーエバーヤングが1着賞金15億円をもぎ取ったサウジカップの名勝負。ロマンチックウォリアーに完全に抜け出された時は万事休すと思ったが、歴史的な差し返しを決めての見事な逆転勝ちだった。
立場は逆だが、すぐに思い出したのはオルフェーヴルが大魚を逸した12年の凱旋門賞のラストシーン。完全に抜け出したオルフェーヴルが一瞬ソラを使ってしまい、ペリエ騎手のソレミアにクビ差でうっちゃりを食らったあのレースだ。
ずっと後になって「あの時、スミヨンにしつこいぐらいに念を押しておけばよかった」と、唇を噛んだのが池江調教師。当時の欧州ナンバーワンジョッキーに「俺に任せておけ」とドンと胸を叩かれ、それ以上、言えなかったことを10年以上の月日が経っても、いまだに悔やんでいたのだ。
今回はフォーエバーヤングと坂井瑠星のコンビを堅持したのが、矢作調教師の意地であり、最高の判断だったと言える。ロマンチックウォリアー陣営は平静を装っていたが、内心はどうだったろう。
それにしてもロマンチックウォリアーは強かった。サウジカップが初めてのダート戦だったのに、そうとは思えない鋭い脚で、先頭のフォーエバーヤングを一瞬で抜き去って見せたのだから。
金鯱賞は、その世界的な名馬を相手に敵のホーム・香港の芝2000メートル(クイーンエリザベス二世S)でクビ差の2着だったプログノーシスの力を決して侮るわけにはいかない。
前走、有馬記念の11着は、鞍上が直前まで未定だったことから推測しても、恐らくは馬主サイドの都合で使った結果が極端なものとして出ただけ。今回は1週前にしっかりと追い切りをやって、馬体の充実も目立っている。昨年、一昨年のこのレースの覇者ということも大きなポイントだ。
同厩舎のクイーンズウォークに川田騎乗というのも、余計なことを考えさせるスパイスになっている。こちらも1週前の坂路でラスト11秒9を馬なりと、すごい動きを見せているが、上位はプログノーシスとみて間違いないはずだ。
岩田康騎手がホウオウビスケッツを選択したことで、デシエルトの鞍上には武豊騎手が収まった。前走、中京の2000メートルで好時計勝ち。逃げることで開花した馬にとって、ここでもいい展開が待っているかどうかは、岩田康騎手の出方にかかっているという皮肉な形。馬券を買うには、ここでも余計なことを考えなければならない。
昨秋、本格化したラヴェルだが、休み明けの分の割り引きは必要な雰囲気。
マイネルモーントは、初コースの中京の適性がどうか。イメージとしてはプラスには働かない感じがしている。