大相撲春場所の12日目に、勝ちっぱなしでいち早く新十両優勝を決めたのは、草野である。日本大学相撲部時代に学生横綱のタイトルを取った角界のプロスペクトは、今場所中に幕下時代のリベンジも果たしていた。
まず3日目、幕下時代に2度の黒星を喫していた大辻に勝利。立ち合いから圧力をかけて土俵際に追い込みながら一度は逃げられるも、再び捕まえて、寄り切りで圧倒した。6日目には、日大相撲部の先輩で、かつて土をつけられた日翔志と対戦。こちらは立ち合いからまわしを取って、豪快な上手投げで土俵に転がした。スポーツ紙デスクが解説する。
「右四つと押しを高い次元で再現できる、オールラウンダーです。それを支えるのは、類まれなる体幹の強さでしょう。優勝を決めた12日目も、狼雅の圧力に土俵際まで押し込まれてしまいますが、最後は下手投げで逆転勝利。多少バランスを崩しても、ギリギリまで耐えてやり返してしまいます」
今でこそ前途洋々なレールに乗っているかのように見える草野だが、角界入り前には、入門予定の部屋がトラブルに見舞われていた。
「小学校時代から大学まで一緒だった、幼馴染の幕下・川副が所属する宮城野部屋への入門が決まっていました。ところが弟子の暴行事件を隠蔽した問題で、閉鎖されてしまった。そのまま『吸収』された伊勢ケ浜部屋に入門するのですが、入門の経緯から外様扱いされてしまい、気苦労が絶えなかったといいます。それを乗り越えて関取に昇進しました」(前出・スポーツ紙デスク)
伊勢ケ浜部屋には尊富士、熱海富士、伯桜鵬、錦富士、翠富士と幕内クラスが勢揃いしている。今後は所属していることがプラスとなりそうだ。
「レベルの高い稽古はもとより、原則として同部屋の力士と対戦しない慣習が追い風になると思います」(前出・スポーツ紙デスク)
1場所で十両を通過して、幕内の壁もやすやすと飛び越えてしまうのだろうか。