2025年度の国公立大学入試、後期日程の合格発表が3月19日にあり、有名大学合格者が出揃った(東大は後期日程の受験なし)。
今年は春の椿事が起きている。灘や開成の東大離れ、医学部離れが加速。一方で東大・京大合格者ランキングでは都立の日比谷、神奈川県立の横浜翠嵐が、医学部合格者ランキングでは桜蔭、豊島岡女子学園の女子進学校が合格者数を伸ばしているのだ。灘は東大合格者数で都立日比谷高校を下回った。
名門校で何が起きているのか。答えは優秀な人材ほど渡米する「ドジャース」現象にある。
ドジャース・大谷翔平の花巻東高校の後輩、佐々木麟太郎は昨年、世界最難関のスタンフォード大学に進学。今年のメジャーリーグ開幕戦にドジャースの大谷、山本由伸、佐々木朗希、カブスの今永昇太、鈴木誠也が顔を揃えたのと同じことが、大学受験でも起きている。
新型コロナを機に、灘と開成の秀才たちは東大・京大医学部受験を見限り、ハーバード大学やイエール大学といったアメリカの難関大学に方向転換している。
2022年には開成が1871年の開学以来初の、スタンフォード大学への現役合格者を出したほか、ほぼ毎年、ハーバード大学に現役合格者を輩出。在校中のアメリカ短期留学に加え、イエール大学とシカゴ大学などから関係者が来日し、入学説明会まで開いているというから驚きだ。
医学部合格者ランキングで桜蔭が1位、豊島岡女子学園が3位に躍進したが、これもかつては東大医学部=理科Ⅲ類を目指してきた優秀な男子学生がゴソッとアメリカに進学しているから。女子学生や地方の進学校が周回遅れの「医学部信仰」にしがみついているにすぎない。
今年の灘の東大理Ⅲ合格者は、前年比3人減の9人。開成に至っては、前年比7人減の5人だ。開成に子供を通わせている医師は、子供を医者にさせるつもりはない、と断言する。
「子供が医師を継いだとして、その頃には少子高齢化で日本人は激減している。年金制度、健康保険制度が継続してるかもわからない。しかも第二次安倍政権以降、自民党は海外からの留学生を大量に招き入れ、今や東大大学院の5人に1人は中国人、10人に1人が韓国人になってしまった。それを国際化というのなら、東大や医学部よりアメリカの大学に進学させたいというのが親心でしょう」
東大合格者ランキングで灘を抜いて5位に躍進した都立日比谷高校も、アメリカ進学者を毎年、輩出している。東京都の留学助成金制度や、ユニクロの柳生正会長の留学奨学金制度を活用して、経済的に貧しい家庭でもアメリカ留学が可能になったからだ。日比谷高校でもまず目指すは、アメリカ進学。英語の授業では毎回、前回の授業の箇所の小テストを実施するが、大学入試共通テストよりレベルが高いため、おのずと共通テストで日比谷の受験生は高得点をマークする。それが東大合格者数を増やす結果となったという。
日比谷と横浜翠嵐に通う生徒の5人に1人は、東大に現役合格する。環境が一変した東大よりアメリカ進学を目指したいなら、庶民でも努力次第で可能になった。公立高校と私立高校の格差がここまで縮まっているのに、高校を無償化する必要はあるのだろうか。
(那須優子)