「山足式プロテクト大成功! 広島には感謝しかない!」
そんな歓喜の声を上げているのは、オリックスファンだ。オリックスにFA移籍した九里亜蓮の補償について、広島は選手ではなく金銭補償を選んだからだ。人的補償で貴重な戦力を失うことにヒヤヒヤしていたオリックスファンは、ホッとひと安心といったところだが、なぜか現役ドラフトでオリックスから広島に移籍した山足達也に感謝する声が相次いでいるのだ。冒頭の声に続いて「助かったァァァァァ!!!フロントの現ドラ山足選択が神過ぎる!」「金銭で九里獲れたのは、お得としかいいようがない」「山足ありがとう!広島は追加で鈴木健矢まで獲得したのがね…」といった具合だ。
広島に移籍した山足にオリックスファンが感謝するとはいったい、どういうことか。
広島は昨年末に行われた現役ドラフトで、出場機会が減った30歳の矢崎拓哉を「親心」から放出。代わりに堅実な守備が持ち味で、内野の全てのポジションをこなせる山足を「若手の手本になる」として獲得した。
当初の狙いは、矢崎に変わる投手の獲得だったとみられている。現役ドラフトは各球団が指名したい選手に投票を行い、獲得希望総数が最も多かった球団が、1番目の指名権を得る。ところが矢崎は5000万円近い高額年俸がネックとなり、思ったよりも人気を集めることができなかった。
その結果、指名順位が下がった広島は、希望した投手を他球団に奪われ、代わりに山足を指名することになったというわけだ。そこで2巡目に期待をかけ、日本ハムの鈴木健矢を指名したまではよかったが、逆に日本ハムは指名を辞退。思わぬ「1増」となってしまった。
こうして現役ドラフトで2人を獲得したことで、支配下枠ギリギリの「68」となり、今後、新しい外国人を獲得したり、育成などから若い選手を上げたりするために、金銭補償を選ばざるをえなかった…というのが実情だろう。オリックスファンにとっては、山足の存在が結果的に功を奏した形になり、感謝しかないというわけだ。
広島は昨季131回2/3回を投げて7勝を挙げた九里を失い、代わりに補償額60%に相当する8400万円を得ることになった。戦力ダウンは誰の目から見ても明らかで、編成の見通しの甘さに納得がいかないファンはいる。
オリックスファンから思わぬ神扱いを受けた山足だが、広島としては神レベルの活躍を強く願いたいところだ。
(ケン高田)