安倍総理には、支持率の低下より頭を抱える悩みがあった。それは味方だったはずの「ネット住民」だ。「中国や韓国に物申すことができる政治家」としてネット上で人気を集め、みずからフェイスブックを活用。ネット住民と距離を縮めてきた総理だが、変化が起こる。「明治日本の産業革命遺産」についての日韓外相会談での合意を韓国側が無視。7月初旬、登録の土壇場で、
「日本が韓国人を強制徴用した施設がある」
と賛成を拒否する。しかし、狼狽した日本側は、
「意思に反して連れてこられ、働かされた者がいた」
と「強制徴用」を認めてしまう。これにネット住民が大激怒して、韓国にシッポを振ったとして、容赦ないバッシングの雨がやまなくなる。官邸筋のある議員が総理の狼狽をこう明かす。
「ネットでの集中砲火に、たいへんショックを受けていた」
余波の続く7月20日には報道番組「みんなのニュース」(フジテレビ系)に出演するものの、視聴率は5.3~6.7%(関東)と、さんざんな結果となった。
9月の総裁選を前に「安倍天下」にかげりが出ると、存在感を増したのは、総理最大のライバル石破茂地方創生相(58)だ。自民党の若手が勉強会で、「マスコミを懲らしめる」などと報道圧力発言が相次いだ際には、「何か自民党、感じが悪いよね」と国民の意識が高まることに危機感を覚える、と苦言を呈したが、その言葉はネットを中心に流行。政権の支持率低下を後押しした。さらに安保法案が衆院で採決される前日にも石破氏は、
「国民の理解が進んでいるかどうかは世論調査のとおりであって、まだ進んでいるとは言えない」
と政権に向けて牽制発言。これを聞いた安倍総理は側近に、
「カチンときた」
と怒りをあらわにしたものの、党内では「今どき『カチン』って‥‥」と失笑される始末だった。
現段階では出馬について見送りを示唆している石破氏だが、いつ対抗馬として名乗りを上げてもおかしくない状況に、安倍総理は支持率回復に向けて必死の構えだ。まず沖縄県の米軍普天間基地の名護市辺野古への移設問題で、移設作業の1カ月間中断を決める。
「沖縄の意見を無視して話を進めれば、ますます傲慢な印象が広まってしまう」(自民党ベテラン議員)
官邸では伊原純一外務省アジア大洋州局長の姿が、たびたび目撃されている。
「北朝鮮への電撃訪朝を相談していると噂されています」(政治部記者)
経済でも秘策を打ち出しそうだ。東京新聞編集委員の五味洋治氏はこう話す。
「日本郵政グループの新規上場は秋から冬にかけて行われる予定ですが、前倒しする案が浮上しています。NTTドコモ以来の大型上場に株式市場は活況となり、株価が上昇すれば相乗効果で支持率が上がると期待しているようです」
──“裸の王様”に服を着させてあげる「お友達」がいればいいのだが。