10月19日に原辰徳前監督(57)が退任を表明した巨人は、高橋由伸新監督(40)の下で着々と組閣を進めている。一方で、下降線をたどるチームを抜け出た前指揮官が目指す方向ははたして──。
巨人番記者が明かす。
「CSファーストステージの阪神戦を控え、チームが東京ドームで練習をしていた時です。原監督が記者を集めて、たあいもない話をしだしました。高校時代の選択授業で剣道か柔道かで自分は剣道を選んだけど、『オリンピックに剣道はないんだよな』なんて口にしたりして、笑みを浮かべて1時間ぐらい饒舌に語ったんです。ちょうど賭博問題が持ち上がった直後で、そのムードを変える意味もあったのかもしれませんが、決戦を前に緊張感が高まる中だっただけに違和感があった。恐らく監督はすでに辞任の意思を固めていたのでしょう。達観している感さえありましたから」
実際、監督を辞した原氏だが、退任会見では、「来年1年間はフラットな形で色づくことなくいたい」と口にし、大役を終えて今後の活動に関しては未定を強調した。しかし、原氏はすでに未来のプランを思い描いているようなのだ。
大胆にも、それは「ミスター超え」だという。
「監督通算12年で7度のリーグ優勝と3度の日本一を成し遂げた原監督は、間違いなく名将でした。15年で優勝5回、日本一2回の長嶋茂雄終身名誉監督(79)と比較しても、その好成績は際立ちます。それでも、V9に貢献し、巨人ファンのみならず国民の多くを熱狂させたミスターと並べば、常に脇役でした。中でも、13年には、ミスターと、後輩・松井秀喜氏(41)の国民栄誉賞同時受賞式を公式戦の前に行い、2人が投手、打者として対戦する始球式では捕手まで務めて引き立て役に回ったことが大きかった。以来、ひそかにミスター超えを誓ったといいます」(球界関係者)
ミスターの上を行く。すなわち、ミスターが成し遂げられなかった栄誉に輝くということだろう。
例えば、偶然なのか、冒頭のように原氏が口にしたばかりの「オリンピック」だ。五輪で全日本を率いての金メダル獲得である。長嶋監督は04年のアテネ五輪の予選で監督を務めたが、本戦を前に脳梗塞で倒れ、代理の中畑監督も、銅メダルという結果に終わった。
くしくも20年の東京五輪の競技に野球が復活しそうな情勢となっている。
「第2回WBCを制し、世界一に輝いた監督だけに五輪で要請が来るのは自然な流れでしょう。ましてフリーの身となったのですから、小久保監督の状況しだいでは待望論が起きるはずです。ミスターも果たせなかった五輪制覇をすれば、国民栄誉賞の声が出てもおかしくない」(スポーツ紙デスク)
実は昨年初頭の時点で、五輪で指揮を執る可能性についてスポーツ紙から直撃を受けた原氏は、
「その時に僕がどういう立ち位置なのか。グラウンド(巨人監督)なのか、あるいはスタンド(評論家)なのか。ただ、どういう形でも参加したいね」
と、すでに意識した発言をしていたのだ。結果的には「スタンド」の立場となった。
原氏は、さらにその先まで見据えているという。
「政界進出ですよ。抜群の知名度と人気で、出馬すれば間違いなく当選するでしょう。もともと人脈豊富な原さんは政界ともパイプがあるようですが、すでに自民党が接触しているとも言われます。原さんの参謀と言われるメディア関係者のX氏が促しているとも‥‥。いずれにせよ、政界進出すれば、現在よりも原さんの影響力は増すでしょう」(前出・球界関係者)
引く手あまたとなりそうな原氏だが、10月26日になって、来年1月1日からの球団特別顧問就任が巨人から発表された。前言撤回のドタバタ感も伝わってくるが、名将はやはりフラットな立場になどさせてもらえないのか。