今季から高橋由伸新監督(40)の下で新たなスタートを切る、巨人の行く末を危ぶむ声が早くも聞こえ始めてきた。新生ジャイアンツは順風満帆とはいかないようなのだ。
巨人では現在、原辰徳前監督(57)の作り上げたチームを解体し、フレッシュな新体制へシフトチェンジする編成作業がフロント主導で進められている。ストーブリーグの非常に早い段階から急ピッチで積極的な補強を続けてきたのだ。
新戦力としてメジャー通算122本塁打のギャレット・ジョーンズ(34)、昨年のゴールデン・グラブ賞にも輝いた内野のユーティリティプレーヤー、ルイス・クルーズ(31)=前ロッテ=を獲得。2人の強力な外国人野手の加入で攻守の弱点をカバーできるとの読みがあるのだろう。
その一方で、両助っ人の獲得は近年衰えの目立つ村田修一(35)と阿部慎之助(36)に対する「当てつけ補強だ」との指摘が出ている。ジョーンズは一塁、クルーズが三塁を守ることが濃厚と見られ、すなわち阿部と村田の定位置と完全にバッティングするのだ。
さらには、西武からFAとなった脇谷亮太(34)を3年ぶりに“出戻り獲得”。脇谷は昨季限りで現役を退いた、井端弘和内野守備走塁コーチ(40)の代役として内野ユーティリティプレーヤーの役割を担うことになるが、メインは二塁の守備となる。そのため、脇谷にとって因縁のFA移籍後、二塁守備だけでなく打力、走力もパッとしない片岡治大(32)からポジションを奪い、引導を渡すこともフロントからひそかに厳命されていると、もっぱらなのである。
「まさにこれは、前監督・原さんの息のかかった選手たちを一掃しようという流れですよ。それこそ村田と片岡は原さんの強力な後押しがあって獲得に至った選手。阿部も原さんが監督を務めてきた期間、ずっとチームの中心、そして主砲として全幅の信頼を置かれたリーダーでした。オフの大型補強は今季で複数年契約が切れる村田と片岡、そして、大減俸されながらいまだ高額年俸(推定3億2600万円)を手にしている阿部に“もうキミたちは原さんという後ろ盾がないからヤバイんだぞ”という“肩叩き”の意味合いが強い」(球団関係者)
だが、これはある意味で危険な賭けとも言える。スポーツ紙デスクが語る。
「いわば“戦力外”のような扱いとされる阿部、村田、片岡のベテラン3人が、今季もチームに忠誠を誓え続けられるかといえば疑問です。3人は当然、積み上げてきた実績に比例してプライドが非常に高い。嫌われ役に徹することができた原前監督ならば上から有無を言わさず3人をガツンと押さえ込むことはできても、昨年までは同じ選手の立場だった、就任早々の由伸監督が厳しい姿勢を貫いて統制を保てるでしょうか。入団や引退という重大な局面ですら、自分の意思を持ち出せなかった青年監督には重くのしかかる課題となる。チーム内には『ヘタをしたらこの3人が不満を爆発させて、一気に火薬庫になってしまうのでは』とチームの空中分解を懸念する声が出ているんです」
しかも、阿部には由伸監督との“不仲説”が昔からささやかれ、関係の危うさも指摘されている。
「阿部は由伸監督のことを聞かれて『監督を男にする』といきまいていたが、内心はわからない。というのも、由伸監督の現役時代からチームには“由伸派”と“阿部派”があって、そのトップの2人は主導権争いをしながら互いに背を向け合っていた時期がありますからね」(別の球団関係者)
ジョーンズとクルーズが加入したことで今季の助っ人選手は7人に膨れ上がり、4人までとされる一軍外国人選手登録枠の中でどう起用するか、についても由伸監督にとっては大きな悩みとなる。鬼になり切れない新指揮官が数々の火種を抱え込み、そのまま心労でパンクすることになれば由伸政権は短命に終わってしまうだろう。危険な兆候がすでに見え隠れしているのである。