しかし、クルーズはすでに触れたようにケガで離脱している。代わって打撃を期待されて起用された、吉川大幾(24)、中井大介(27)の若手2人は打率2割にすら届かない惨状だ。新人の山本泰寛(23)とベテランの寺内崇幸(33)をあわせて模索が繰り返され、セカンドレギュラーが不在という事態に陥った。
悩みの種はセカンドだけではない。捕手も不在だ。
骨折で離脱していた正捕手の小林誠司(27)は7月8日にようやく復帰したばかり。その間マスクをかぶるのは相川亮二(40)のハズだった。だが6月24日のDeNA戦で、それまで防御率0点台だった菅野智之(26)を大炎上させてしまう。
「相川は初球ストレートを要求するんですが、それがバレていた。この日、敵の狙いに気づかずリードし、2回1/3で9失点と試合をぶち壊してしまいました」(巨人番記者)
決して味方への不満を漏らさなかった菅野が、この時ばかりは堪忍袋の緒が切れた。ベンチ裏で、
「(相川は)投げにくい」
とバッサリ。これをきっかけに、首脳陣からも選手からも相川の信頼が失墜することとなった。
リーグ優勝どころか、06年以来10年ぶりのBクラス落ちの危機も見えてきた緊急事態に、たまらずフロントが異例の決断を下す。6月、球団事務所で行われた編成会議で、堤辰佳GM(50)が、こう発言したのだ。
「非情な決断を下すことも辞さない」
堤GMは高橋監督と、同じ慶応大学野球部出身で先輩後輩の関係。現役引退を要請し、監督就任させた生みの親で、
「心中する覚悟」
と言うほど、高橋監督にほれ込んでいる。そのGMが、ついに巨人の「聖域」にメスを入れる決断をしたようだ。別の球団関係者が耳打ちする。
「この時、話し合われたのは現戦力の来季への編成です。平時であればオールスター明けの議題ですから、球団がよほど危機的状況に置かれているということだ。コーチの人事異動も議題に上りました」
現在一軍のコーチ陣容は、ヘッドコーチに村田真一(52)。打撃コーチは内田順三(68)と江藤智(46)。守備走塁コーチに、井端弘和(41)、大西崇之(45)である。巨人伝統の“ヘッドコーチ切り”はあるか──。
「内田さんは本人が固辞したのを、高橋監督が三顧の礼でコーチに迎えた経緯があります。また井端さんは、監督とともに現役を引退してまでチームを支えてくれています。この2人は切れない。江藤さんと大西さんを異動させることになりそうです。村田さんの責任を追及する声も上がりましたが、現時点で後任が見つからない」(前出・球団関係者)
この編成会議では、「小林では不安だ」 と捕手事情について話が及んだが、支配下に捕手が9人もいながら他球団から補強するしか解決策が出なかった。白羽の矢を立てたのが、骨折で離脱中の楽天の捕手・嶋基宏(32)だ。
「実は14年オフにも獲得に動いたが失敗した。楽天も若返りを図り、捕手は新人の足立祐一(27)を育成する方針に変えている。こうした背景がある以上、楽天もしかたないと考えているはず。来季優勝のため、オフに全力で獲得へ向かう予定です」(前出・巨人番記者)