「球界にとってコトを荒立てない解決があればいい」──。巨人の元職員のもとに、そんな不気味な警告が届いたという。電話の主はなんと、原前監督にいまいましい記憶を残した因縁の相手だった。暴力団排除に全力を尽くす球界をあざ笑うかのように、時代を逆行させた不敵男を本誌は徹底的に追及、その「黒い全貌」とは──。
8月11日、巨人の元球団職員の携帯電話に奇妙な連絡が入った。男がこうまくしたてる。
「元暴力団組長・Xと、その親分筋の男性から相談を受けた」
電話をしてきたのは、元暴力団組員の「K」という男だった──。
事態を整理するため、まずコトの発端を説明しよう。
実は、NPB(日本野球機構)が6月16日付で、先のX氏に通知書を送っていた。そこには、X氏に対してプロ野球12球団の球場への入場禁止や、選手との接触をしないよう求める文面が書かれてあった。X氏を知るNPB関係者が語る。
「Xは芸能関係者として選手に近づき、パスをもらって試合前のグラウンドにも出入りしていたそうです。何人もの有名選手が懇意にしていたようで、特に巨人は、坂本勇人(27)、長野久義(31)、内海哲也(34)ら、多くの主力選手が交遊していた。Xは試合後に選手を引き連れて六本木に繰り出しては、食事を共にし、二次会ではキャバ嬢やタレントのような20代の美女たちを集めてもてなし、球界人脈を広げていたんです。選手たちのいい兄貴分のような存在でしたが、笑った時でも目の奥が笑っていない様子が怖く、違う世界の人間だと半ばわかっていた選手もいたといいます」
しかし「暴力団組長」という“前歴”が、野球賭博問題でコンプライアンスに過敏になっていた巨人の調査によって明らかにされ、X氏には前述の通知書が届けられたのだ。
そして12球団全てに、X氏のカラー写真・実名・住所・生年月日・電話番号などの個人情報がつづられた“手配書”が配布され、選手ロッカールームなど球場内に貼り出された。
その直後、X氏からではなく、Kという“黒幕”から巨人サイドに連絡があった、というわけである。
都合3回にわたってかかってきた電話の全容は、脅迫電話そのもの。Kは以下のように巨人の元職員を揺さぶってきたという。
「(NPBから)一方的に手紙を送りつけられて、Xは生活もできなくて困っており、頭にきている」
「Xは、『巨人の選手と一緒に映った写真もあるし、メールのやり取りも残してある。みんな一軍の選手ばかり十数人だ』と言っている」
「親分筋の人は、人殺しも平気でやる怖い人だ」
「球界にとってコトを荒立てない解決があればいい」
“コトを荒立てない解決”と言いつつ、暗に金銭を要求するこの電話について、巨人の森田清司総務本部長は、
「職員、選手に危害を加えると脅迫を受けたと認識している」
と語った。巨人は同日中にNPBに報告し、事態の公表に至ったという。
匿名で公表された、Kという人物──。
実は、巨人の関係者にとっては二度と聞きたくない名前であった。なぜなら、Kによる巨人への恐喝は、今回が初めてではなかったからだ。