実は15年夏、同年かぎりで退任確実となっていた原辰徳前監督(58)の後任候補としても、中畑氏はその名が一部の球団幹部クラスや読売本社内で取りざたされていた。しかし当時はまだDeNA監督の職に就いていた状況であり、プランは具体化することなく消滅。結局、高橋監督にバトンが渡される形に落ち着いた経緯があった。
ところが今季、その高橋監督の“メッキ”が次々と剥がれていったことから風向きが変わりつつあるという。「本当は何もしていないんじゃないか」とまで有力OBが陰口を叩く采配、育成面など監督としての手腕と経験不足を露呈したことに加え、メディアに対してぶっきらぼうな対応ばかりが目立つ非協力的な姿勢にも、ファンサービスを重視する球団内から疑問の声が上がっているのだ。
一方の中畑氏は明るく、サービス精神も旺盛。何よりもキャラが確立されていて、ファンの支持が非常に高い。
「DeNA監督時代に集客能力を発揮したのはもちろん、ルーキー時代の山崎康晃(24)をストッパーに抜擢したり、山口を先発転向させるなど、選手の力を発揮させる適材適所の用兵をズバズバ的中させた。筒香嘉智(25)、梶谷隆幸(28)、桑原将志(23)といった現在の主力を使い続け、育て上げたのも中畑前監督の功績です」(スポーツ紙デスク)
もしV逸責任で高橋監督が17年オフに解任されれば、球団内の非主流派を中心に「中畑巨人」の誕生を望む声が再び強まっていくことになるのだ。
「そもそも、中畑さん本人が念願の巨人監督就任にやる気満々です。12月4日に行われたOB会総会で中畑さんはかつて犬猿の仲と言われた原さん、そして由伸と同じテーブルに座っていた。同席したのには中畑さんが副会長に、そして原さんが幹事と、それぞれ役職に就任したという事情も確かにあります。しかしそれよりも、中畑さんが前監督、現監督と顔を並べたのは、次期監督候補として名前があがっている自分の存在感をOBたちに見せつけたかったからともっぱらです。実際に、ある有力OBが『キヨシは“ジャイアンツの監督をやれ”と言われれば、明日からでもYGユニホームを着る』と断言しているほど。ちなみに中畑さんは当日、マイクを握って『由伸監督は頑張りましたよ。結果を残したことは評価したい』とやや上から目線でエールを送っていました。“由伸より自分が格上”というところを周囲に印象づけているようでした」(別の球団関係者)
しかも、ここ最近の中畑氏は、複数の親しい巨人の球団幹部たちに、
「ベイスターズの監督時代は結果が出せませんでしたが、今季Aクラス入りのベースを作り上げたのは自分です。そこは自負しています」
と、吹聴して回っているという。並行して、球団内で強い発言力を持ち、中畑氏を寵愛する長嶋茂雄終身名誉監督が周囲に対して、
「松井(秀喜氏)は(巨人監督として)戻ってくる気がなさそうだからなあ。キヨシには、一度だけでもジャイアンツの監督をやらせてあげたい気持ちがある」
と本音を漏らし、バックアップしているとの情報も聞こえてきているのだ。
DeNA時代の教え子・山口の去就が決まらない時に、中畑氏が「俊は巨人だ。そう聞いている」と断言したこともあった。
「実は山口が巨人か中日かで迷った時期、中畑氏に相談していたそうです。巨人入りは中畑氏の進言だったとも」(球界関係者)
自分が17年オフから巨人監督に就任することを見越したうえで、教え子のG移籍を根回しし、戦力補強していたのか──。いずれにしても、1年後に激動の監督人事が断行されるかどうかは、由伸巨人が結果を出せるかどうかにかかっている。