昨年11月、歌手・ASKA(58)が警視庁組対5課に逮捕され、実刑は免れないと見られていた。ところが、嫌疑不十分で不起訴。この処分がなんと、薬物犯たちに知恵をつけてしまったというのである。
ASKAは任意の尿検査で陽性反応が出て逮捕されたが、その後、提出したのが尿ではなくお茶だったことが発覚。結果、無罪放免となった。
違法薬物事情に詳しいヤクザ幹部が、今回の不可解な行動に関して解説する。
「事前にスポイトで別の液体を用意しといて、採尿の際に使うってのは以前からあるやり方だな。ASKAは売人から指導されてたんだろうよ。そもそも素直に尿を提出していないのが、やましさそのもの、シャブとの関係をバラしてるようなもんだな」
いまだ、こうした見方をする事情通は少なくないが、警視庁関係者が不起訴に至る背景について語る。
「そもそも、お茶から陽性反応が出るとは不思議ですが、元来、尿検査の予備鑑定で微量の反応が検出されたとしても、『擬陽性』ではなかなか逮捕まで至らない。その場合、本鑑定をして間違いなければあらためて本人の身柄を確保しますが、まったくの誤りである『偽陽性』の可能性すらありますからね。いずれにせよ、失敗するとダメージが大きい有名人逮捕を焦った結果でしょう。担当刑事が採尿の際に手元を確認していなかった失態も大きかった」(警視庁関係者)
いずれにせよ、今回の不起訴処分の結果、「たとえ警察から追及されても、言い訳がうまく通れば生還できる」という“認識”が一部のシャブ犯たちの間でまかり通っているというのだ。
ASKAのように、自宅まで捜査の手が及んで証拠が出ても、平気でシャブ犯がこんなシラを切るという。
「飲んでたお茶に警察がシャブを入れた」
前出・警視庁関係者が言う。
「勾留請求で担当刑事が検察に行くと、検事から『そういう事実はありますか?』と質問され、『ありえないです』と答える不毛なやり取りがあって、現場はうんざりです。とはいえ、『知らない人に打たれた』『カゼ薬を飲んだだけだ』『隣の人があぶっていたのを吸引してしまった』と、荒唐無稽な言い訳は多岐にわたり、立証できないことで容疑者を取り逃がしてしまうケースも出ている。警視庁組対5課は対策を講じていますが、千葉や埼玉などで逃げられるパターンがまだ多いと聞きます」
さらには路上での職務質問にも、悪ノリしたシャブ犯は「任意」であることを理由にかたくなに拒否する。
「身に覚えのある現役ヤクザなんかは『任意だろ? 本部から呼ばれてるから忙しいんだ。指詰めることになったら責任取ってくれんのか!』って強硬に振り切ろうとする(笑)。でも警察だって怪しいヤツは何とかして調べようとするよ。応援呼んで取り囲んで、逃がさないようにしている間に令状を取るんだ。使用前科のあったヤツに対して病院まで連れてって、診察台にくくりつけ、パンツ脱がしてカテーテルで強引に採尿したこともあったってな」(前出・ヤクザ幹部)
時に、こんな「イタチごっこ」に弁護士が登場する。
「職質された場合、警察に囲まれてしまうと、任意を盾にしようにも、多勢に無勢となる。だから、特にヤクザ者は事前に準備していることが多いですが、“奪還弁護士”が登場するんです。電話1本で駆けつけます。呼ぶだけでおよそ15万円、警察から逃れられれば計50万~60万円の費用がかかりますが、繁盛しているという話です。今回のASKA事案より前、ここ2年ほどで普及していましたが、今回、ますます需要が増えていると。有名な奪還弁護士は3人ほどいて、依頼主と帰る際、覆面パトカーに追われても、仲間が間に入って、逃げ切るまで徹底しているようです」(前出・警視庁関係者)
いやはや、無罪のASKAが罪作りなことをしてくれたようだ。